返信する

[1] 重奏
By TAXI
01-08 14:12
TAXiとmomoはサイトという世界で出会い、恋に落ちた…
画像 [編集]
[9] By 8
01-26 09:44

ここ数日の画像、それも自らの顔写真を添付する流行りについては知っていた。だが私は、そんな風潮に同調しようとは思わなかった。写真に対するレスポンスが恐ろしいというより、己れを世間に公表出来る程の自信が無かったのだ。そんな私に出来たことと言えば、目だけの接写や全身写真等、個人の特定が出来ないようなものを貼り付けることだけ。目立ちたい欲求を中途半端に解消することだけだった。

労働を終え、寝所に横たわった私は、いつものように地下室を覗きに行った。
地下室の新たなスレッドというのは常に興味を惹かれる。もちろん即日すたれるスレもあるが、やはり覗いてみたくなる。
この日も、興味を惹かれるスレッドが立ち上がっていた。スレッド主のハンドルネームは『もも』。最近現れた娘だ。時間限定で顔写真を掲載するという。
いつものように、私の親指が携帯電話のボタンを探る。カーソルを移動させると実にたやすく、『ENTER』が押される。それが自らの人生を根本から揺るがす契機になるとも知らずに。
[編集]
[8] By 7
01-24 23:00

11月1日、瑠璃は『時間限定』と銘打ちスレッドを立ち上げた。地下室内に流行し始めた『顔さらし』のブームに乗り、自らの画像を付けたスレッドでTAXiへのアプローチを試みたのだ。しかしそれはひとつの賭けだった。何故なら掲示板の持つ特性上、不特定多数に自らの顔が知れ渡ってしまうからだ。携帯サイトの危険性を知っている瑠璃は何よりもそれが心配だった。そしてもうひとつ。そんなリスクを背負っても尚、TAXiが現れなかったら…。
そんな祈る気持ちで立ち上げたスレッドから、瑠璃は目を離すことが出来なかった。1分に何度もページの更新を試み、TAXiの登場を待った。しかし現れるのはその他の住人ばかり。住人との会話で気は紛れるものの、やはり待ち人が気になる瑠璃であった。
[編集]
[7] By 6
01-18 23:24

浮上していたスレッドはTAXiの詩スレだった。瑠璃は高鳴る鼓動と共に入口をクリックした。
スレッドの最下部。書き込みの張本人はやはりTAXiだ。孤独について詠まれたその詩は、瑠璃の琴線に触れた。内容如何ではない。全てはタイミングだった。何故? TAXi、あなたはどうして私の邪魔をするのでしょう。私の生活をかき乱すのでしょう。

瑠璃は自らの思考の先を思う。
これは、恋愛なのだ。
ならば想いを成就させたい?
それとも平穏な日々を取り戻したい?
いっそのことフラれたい?
どれも、当たってる…。
じゃあ、どうする?

瑠璃を後押すのは、彼女自身。
瑠璃は行動を起こす。

[編集]
[6] By 5
01-15 17:53

瑠璃がTAXiを知り、彼が近隣に住まう者であることが判明し、掲載された詩を読むにつれ、数日前に感じた興味はより積極的な関心に変わり、今となっては瑠璃の胸を締め付けている。ほんの数日とはいえ、日常がおぼつかない。瑠璃は思う。これは「好感」ではなく…。
そんな迷いの中にあった瑠璃は、いつものように地下室を訪ねた。
時を同じくして、とあるスレッドが上昇していた。
[編集]
[5] By 4
01-12 18:49

瑠璃の気持ちの機微など知るはずもない私は、金沢にいるであろう『もも』という娘の存在にいささかの興味を持ちつつも、やはりそんな劇的な出会いなど起こるはずもないと、「諦めよう」と決意する手前で既に諦めていた。
私の身に、ドラマなことは起こらない。
そんなことを考えながら、日は昇り、また沈み、暦は11月1日を迎える。
いつもと同じように始まった一日が、いつもとは全く違う終わり方をするなどとは、その時の私は夢にも思っていなかった。

[編集]
[4] By 3
01-11 01:09

その頃、金沢の閑静な住宅街では、『もも』と名乗り地下室に通う乙女、瑠璃が携帯電話のディスプレイを凝視し、何度も何度もページ更新をクリックしていた。
わざわざ私の自己紹介に返事をくれた『TAXi』とは何者か。香林坊に現れるとはどういうことか。果たして、どんな人だろう。TAXiってどんな人なんだろう。

間もなく彼女はTAXiがスレッドを立てていることを知った。
映画スレと詩スレ、冒頭に名を連ねているのはこのふたつだ。
彼女はTAXiの人となりを知るべく、スレッドの扉を開いた。

映画スレは、長文がずらずらと並ぶ酷く読みづらいスレッドだった。
TAXiが観た映画について感想が述べられているだけの面白味の薄い書き込み。
どの作品も、どの俳優も、彼女は全く知らなかった。
どれだけ懇切丁寧に書かれていても、知らないものには興味が湧かない。
ただひたすら画面の文字を追った瑠璃は、軽い疲労感と共にスレを後にした。

一方の詩スレは色々な人が書き込みをしていて(映画スレよりは、だが)盛り上がっているようだった。
相変わらずTAXiの書き込みは長く、読みづらい言葉の連続であったが、改行や文節が多く取ってある為、比較的見易かった。

この人は、自分の世界を持っている人だなぁ。
瑠璃は理屈だらけの言葉の向こう側に、ほのかな好感を抱きながら、TAXiの詩を眺めていた。

[編集]
[3] By 2
01-09 23:35

出身は石川県金沢市。ももはそう記していた。
私の故郷の隣県。近い。
何故だろうか、私は『時々香林坊に出没します』と書き込みをした。自分の素性を晒すことの無かった私としては、これは一種の冒険だ。破られる匿名性。私は初めて、自ら歩みを進めた。

労働の合間に覗く地下室。
もものレスポンスは戸惑いに満ちていたように思う。
『…それは金沢の香林坊ですか?』
私という存在に対する興味、もしくは警戒とも取れる発言。
冒頭の『…』が気になる。
私は落ち着き払って『香林坊109のシネモンドに映画を観に行きます』と返信した。
[編集]
[2] By 1
01-08 14:17
退屈で、眠れない夜。
手を伸ばすと広がる仮想空間。
『地下室』と銘打たれた世界に、私が迷い込んだことから、物語は始まる。

2005年4月末。
偶然辿り着いた地下室に、私は入り浸ることとなった。
『TAXi』と名乗り、去来する人々を見つめながら過ごす日常。
地下室でも時間は退屈な現実と同じ調子で流れ、ちまたでは木枯らしが吹き始めていた。初冬。
『もも』と名乗る娘が現れる。
男臭い部屋にやってきた女は皆『蝶よ花よ』ともてはやされる。
彼女がどんな娘だかはしらないが、花が増えるのはいいことだ。
その時はそんな印象しかなかった。

スレッドが浮上する。
地下室管理人が作った『自己紹介』のスレだ。
「初めての人は書き込むように」と促している。
ももはその他の人々と同じように、自分についての発言をする。

その表記が、運命を変えた。
[編集]
[*前][次#]
返信する

[戻る]
i-mobile


[掲示板ナビ]
☆無料で作成☆
[HP|ブログ|掲示板]
[簡単着せ替えHP]