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Last Love
[1]ゆきな
実体験をもとにした小説です

更新が遅いかもしれませんが、見てくださったら、嬉しいです

感想などもお待ちしてます
:N903i
:10/31 23:49

[2]ゆきな
―空港―

もうすぐあいつはニューヨークに向けて出発する。
雑踏の中でのアナウンス。『○○航空、×便、ニューヨークへ出発のお客様の搭乗手続きが始まります。カウンターまでお越し下さい。』




彼『俺、もう行かなきゃ。』
私『あっ…うん。』
彼『らしく、頑張ってくるって。そんな心配するなよ。』
私『体調だけは気を付けてね。楽しんできて。』
彼はいつものまぶしいくらいの笑顔で、私に別れの挨拶をしたが、私は、目に涙を浮かべながら、でも必死にこらえて、彼を見送った。
もっと言いたい事、たくさんあったのに…。

彼がゲートに向かい、その姿が見えなくなるまで、私は呆然と彼の背中を見ていた。

彼は予定通りの飛行機で、ニューヨークに飛び立った。
私は1人空港の喫茶店で、彼の事ばかり考えてた。



―発端は約1ヶ月前

彼『俺、ニューヨークに行く事にした。舞台の勉強をしに…』
私『は?えっ?どれくらい?』
彼『うん…3ヶ月くらいかな。』
私『3ヶ月!?』
彼『でも、遅くなるかもしれない…』
私『あっ…そう。』

驚きのあまり、それしか言えなかった。
でも私はその時、彼は行ったら帰ってこないかもしれない…という事を覚った。彼はいつも唐突で、なんでも1人で決めて、いつの間にか、私の傍から消える。消えたと思ったら、戻ってきたり、私はそんな彼に、6年間付き合っている。
いい加減だけど、放置されるけど、でも大好き。
何より、彼が好きな事に夢中になってる姿が愛しくて、その笑顔に私は何度も救われてきたから。


―3ヶ月…。会えないのはいくらでも我慢できる。でも、連絡もできない、全く遮断された環境の中で、私は自分を保てるかな?
3ヶ月で帰ってくる保証もない。そんなあいつを待ってていいのかな?
1人でいると、つい切なさに負け、考えがネガティブになる。
それから、彼と出会った頃の事を思い出した。

:N903i
:11/01 00:24

[3]ゆきな
―彼と最初に出会ったのは、もう6年も前の事だ。


あれは…そう。中2の夏休みになったばっかりの時、私は、他校ではあるが幼なじみの達也と、いつものメンバーでいつもの場所で遊んでた。そんな時新しい仲間を紹介すると言って、達也が連れてきたのが、翔だった。達也の後をちょこちょことこっちの様子を伺いながら近づいてくる翔。
達也が翔を自分の前に突き出し、紹介を始めた。『こいつ、翔。バスケ部。なかなかイケメンだろ(笑)。』
翔は照れながらみんなに挨拶をした。
『翔です。仲良くしてください!!』
それだけしか言わなかったけど、翔の笑顔が人柄を表していた。
私は彼の笑顔に一瞬で惹き付けられた。一目惚れだった…
きっとあの時、彼の笑顔に惹き付けられたのは私だけではなかったはず。
それくらい彼は輝いていた。まさに爽やかな好青年。まるで、マンガから出てきたような、スラッと細身で繊細かつ綺麗な顔立ち。

翔がみんなと話しているのを、ぼーっと見て、こんなに格好いいんだもん。きっと彼女いるよね。と自分に言い聞かせ、私なんて、相手にされるわけもないと、久々の恋を楽しむのは愚か、もうどこか諦めている自分がいた。

:N903i
:11/01 23:56

[4]ゆきな
達也が私に話かけてきた。
『ゆきな、翔と話さないの?ゆきなが男紹介してって言うから、連れてきたんだよ(笑)翔、なかなかいいだろ?あいつバスケも選抜選ばれるくらいの実力で、コーチにも注目されてて…モテるし、ずるいんだよな。でもあいつ彼女つくらないんだ。俺には、バスケの練習がある…とか言って。
ゆきな、頑張れよ。話し掛けろよ(笑)』
『あたし、達也に男紹介してなんて言った?ありがと。でも話し掛けられないよ〜。緊張するし…』
『何言ってんだよ。』
達也はそう言いながら、私の背中を押し、翔の前に突き出した。
『翔、ゆきながお前と話したいって。』
えぇ?何話そ…
距離が近すぎて、緊張して何も言葉がでてこない。
そう思ってると、翔から、話かけてくれた。
『ゆきな…ちゃんだよね?なんて呼べばいい?俺の事は翔って呼んで良いよ。さっき、みんなと話してけっこう打ち解けたんだけど、ゆきなちゃん、全然喋らないから…もっと話そ?』
『あ…ありがと、翔。私の事はゆきなでいいよ。ごめんね。なんかうまく話せなくて…ありがとう。』
私はその時、自分のほっぺが赤くなっているのを感じてた。
翔と、話をしていると、バスケ部だったり、好きな音楽のジャンルが一緒だったり、共通点が多く、話は盛り上がった。
時間が本当にあっという間に過ぎていった。
その日は解散。達也と翔が私を駅まで見送ってくれた。
『じゃまたな。』
達也がそう言うと、翔は笑顔で、『今日はありがと。気を付けて。バイバイ』
私もその日一番の笑顔で、『バイバイ』って言って、二人と別れた。


1人、電車の中…
さっきまですごく楽しかったからか、一気に寂しさが込み上げてきた。
携帯を開くと、達也からのメール。
『翔がゆきなの番号とアド知りたい。って…教えていい?』
『もちろん!!いいよ。』それだけで、どこか寂しさから一気に舞い上がる自分がいた。それからすぐ翔からメールが…
『今日は本当に楽しかった。ありがと。今日話して、俺、もっとゆきなを知りたいと思った!今度良かったら、二人で遊ばない?』
翔からの一通目のメール。正直、嬉しすぎて、その後自分が返信した内容は覚えてないけど、『こちらこそありがと。あたしも…翔をもっと知りたい。』とか、送ったはず(笑)メールだから言えた精一杯を…

今思えば、あの日あの時、あのメールから、私達の恋は、始まったんだ。

:N903i
:11/03 00:29

[5]ゆきな
―あのメールから数日

私達は毎日メールをする仲になっていた。お互いの学校の事、部活の事、友達の事、趣味の話など…話題は常に尽きる事がなかった。
翔と出会う前は、部活終わりで帰ってきて、ヘトヘトで何もする気の起きなかった自分が、翔と出会ってから、メールができるというだけでどんなに疲れてても、なんでもやる気になれた。本当に恋のパワーって、すごいなって感心したのも初めてだった。

部活終わり…
携帯を見ると…
翔からのメール。
『今度の土曜空いてる?会いたいんだけど…』
私は急いで返信した。
『空いてるよ!!部活も休みだったし。』
『じゃぁさ、いつもの駅で10時に待ち合わせな。』
『うん。分かった。楽しみにしてる♪』

翔と二人で遊べる。それだけでいつもの自分ではあり得ないくらい、ハイテンションになった。


―待ち合わせの日
私はドキドキしてて、落ち着かなくて、駅にはだいぶ早く着いた。翔がどこから来るか楽しみにしてる自分もいれば、今日のファッションが、翔に気に入ってもらえるか不安になってる自分もいた。

待ち合わせの時間ちょうど10時…
翔は来ない
ちょっと遅れるのかな?

10時15分…
来ない
翔は待ち合わせ時間に遅れるような人じゃないよな?心配になってきた。

10時半…
来ない
メールしてみよう。

11時…
来る気配もない
もしかして、急に部活の練習が入ったのかな?

12時…
もうここに2時間。
来ない
電話しよう。
けれど翔は電話に出なかった。私ひょっとして、からかわれた?遊ばれた?
あと30分待って来なかったら、今日は帰ろう。

12時25分…
向こうから翔らしき人が走ってくるのが見えた。

翔だ!!!

『ハァ…ハァ…』
だいぶ息を切らして、こう続けて言った。
『ハァ…本当にごめん。待ち合わせに最初から遅刻とか、俺サイテーだな。』
『大丈夫だよ。それより何かあったのかと思って、心配になってメールと電話したんだけど…気付かなかった?』
『あっ。見てない。ごめん。走ってる途中だった。』『そんなに走らなくて良かったのに。汗びしょびしょ(笑)ジュース買ってくるよ。』
『おぉ。サンキュー。』
それからジュースを片手に二人で歩きだした。
『遅刻した理由聞かないの?』
『別に。あたし気にしてないし。』
『そっか(笑)』
まだ付き合ってもない。
ぎこちなさとたまにある沈黙が、異様に長く感じた。

:N903i
:11/05 00:04

[6]ゆきな
それから私達は近くの海に着いた。
浜辺に座り、いつものように、たわいもない話をしていた。
目の前には海。風が心地よく、隣には好きな人がいる。これほど幸せな事はなかった。
1人喜び、テンションが上がってるあたしの横で、翔は深刻そうな顔をしていた。


『どうかした?』
『あぁ、ごめん。なんでもないよ。』


翔はそう言ったけど、いつも、みんなといる時の翔ではない気がしていた。
私はそんな翔を見ていられなくて、勇気をだして、自分から話始めた。
『今日は誘ってくれてありがとう。すごい嬉しい。』『こっちこそありがとう。待っててくれて本当に良かった。』
『あたし、待つの好きだから。全然大丈夫だよ。』
『本当?ごめんね。今日はどうしても会って話たい事があってさ…』
『え?なぁに?』
『俺さ、ゆきなと話してるとすごく自然体でいられるんだ。それでゆきなとメールしてて、たくさん共通点ある事知ってさ。もっと、ゆきなの事知りたい!って思った。もし、良かったら俺と付き合ってくれないかな?』
『…』
私は言葉を失った。頭の中が真っ白だった。だって、あたしなんて相手にされるわけがないと思ってたのに…好きだと思ってたのは、あたしだけじゃなかった?まさか、これ両思い!?
しばらくして言えた言葉は…


『ちょっと考えさせて。』

もちろん心の中で、答えは決まっていた。けど、うまく言葉にできなくて、その場をしのぐために、それしか言えなかった。
私はいつも恋愛に奥手で、経験もなくて、嫌われないようにするのに必死だった。

『ゆっくり考えて。無理だったら、気まずくなりたくないし、これからも友達として遊んでね。』
『うん。』


その日はもう帰る事になり、私は電車の中で、翔が告白してくれた事を思い返していた。思い返すだけで、心臓がバクバクしてた。

私にとって、初めての本気の恋。最初で最後の恋。

家に帰り、冷静になって、翔にメールを送った。

『今日はありがと。楽しかった。返事だけど…あたしも翔の事もっと知りたい。あたしで良ければ、こちらこそ付き合ってください!』
それからすぐに翔から返信がきた。
『良かった。俺幸せだわ。本当にありがと。これからもよろしく。』

私達は出会って1ヶ月、晴れてカレカノの関係になった。



しかし、この時はお互いまだ知らなかった。これからいくつもの壁が二人の前に立ちはだかる事を…
:N903i
:11/05 23:51

[7]ゆきな
―それから―
翔は私が会いたいと言うと片道1時間半かかる私のところまで、必ず来てくれた。学校が違うから話す事も山ほどあって…些細な会話で話が弾んで、毎日毎日メールに電話…会うペースは週2〜3くらいだった。
なんとも充実した日を過ごしていた。中学生のくせにって思われるだろうけど、あの頃のあたし達は、本当に愛し合ってた。
翔と出会って3ヶ月…冬が近づこうとしてた。冬になると無性に人恋しくなる。周りの友達は、学校内での恋愛を楽しんでて…友達カップルが一緒に登下校してたり、授業中や昼休みに楽しく会話してるのを見るだけで、すごく羨ましかった。それと同時に、切なさも込み上げてくる。翔が同じ学校だったら良かったのに…
学校が正直めんどくさかった。学校にいる時間があるなら、この時間を翔と過ごしたいと思った。
私が1人そんな事を考えてた時、翔は部活で多忙な生活を送っていた。選抜のレギュラーに選ばれるために、朝から夜まで練習をしているというのを達也から聞いていた。その中でも、ちゃんと私と連絡をとる時間は作っていてくれた。メールや電話の回数が減っても、お互いを支え合う関係に変わりはなかった。
『今度、翔の試合見に行ってもいい?』
『だめぇ。』
『なんでぇ?』
『恥ずかしいから。』
本当に恥ずかしそうにしてた翔がすごく可愛かった。『もっと練習して、うまくなったら来ていいよ。』
翔はそう言ってくれた。

それからというもの…私は翔の試合を楽しみに生活していたのだが、中3になり、私は塾に通い始め、翔と会えるのも月に2度、会えれば、いい方になっていた。そんなんで時間は過ぎ、もう翔と出会って1年…2度目の夏を迎えようとしていた。
私の方は、弱かったので一回戦負けで引退試合を終えたが、翔のチームはどんどん勝ち上がり…とうとう最後の試合で私は翔の試合を見に行く事ができた。
その日の試合は翔のチームの勝利、見事優勝。翔も最優秀選手賞をもらった。
初めて見た…翔がバスケをしているとこ…汗までもが、光って見えた。本当に格好よくて、同じプレーヤーとして尊敬するくらい鮮やかなプレーだった。
翔の引退試合の打ち上げに参加させてもらい、その日は別れ、明日二人でお祝いしようという事になった。次の日、翔にプレゼントを買いたくて、私達は原宿に出かけた。ここで私達の未来を大きく揺るがす事件に遭遇するなんて思ってもみずに…
:N903i
:11/11 00:38

[8]ゆきな
その日は翔の方が早く待ち合わせ場所に来ていた。
『めずらしく早いじゃん(笑)』
『うん。もう絶対遅れないって決めたから!俺、ゆきなを心配させる事はもうしないよ!』

心配させない…
翔があの時、笑顔で言ったその言葉は今も私の頭の中に残ってる。
けど、私が翔を心配しなかった事なんてない。翔は私に、事ある毎に、いつもいつも心配をかけさせた。

この日もそうだった。

最初は二人で買い物して、楽しい時間を過ごしてた。翔のプレゼントも、二人で見て決めた…
『俺、これが欲しい。』
って言った、青色のショルダーバッグ。
中学生にしては奮発して、買ってあげたら、翔はすごく喜んでくれて、ずーっと使うからって約束してくれた。

『歩き疲れたし、休もっか…。』
『そうだね。』
『俺、飲み物買ってくるから、ここで待ってて。』
『分かった。』
私はそうして近くの公園のベンチで翔を待っていた。
でも…30分経っても戻ってこなかった。どこまで買いに行ったんだろう?さっき、もう遅れないって言ったばっかなのに。でも、下手に探しに動いて、帰ってきたら分からないかもしれないから、もう少しここで待ってよう…と思った。きっと大丈夫…翔の事だもん。心配しながら、どこか落ち着いてる自分もいた。
1時間後、翔が向こうから走ってきた。
『ハァ…ハァ…本当ごめん。なんかスカウトされて…読者モデルやってみませんか?って。それで話につかまっちゃってさ…(笑)』
『大丈夫。翔は絶対私のとこに戻ってくるって信じてるもん。てか、スカウトされたって本当?すごいじゃん!!』
『ありがとう。なっ…驚いた。でも嬉しかったな。』『どうするの?やるの?』『話聞いてみて、興味湧いたし、やってみようかな。』
『そっか。翔がやりたいなら私応援するよ。』

翔は確かに格好いい。あたしになんか全然つりあわないくらい…。学校違うけど、達也から翔はモテるって聞いてるし、不安だった。いつかあたしから離れてくんだって。しかも翔が本当に雑誌に載るようになったら…そう考えただけで、不安で仕方なかった。
翔には、いつも驚かされるばかり。そのたびに、私の心配は増えていったし振り回されてばかりだった。

それから数日。翔は読者モデルになる契約を済ませた。部活を引退しても、受験勉強と読者モデルの仕事とで、以前より忙しくなった。当然会う機会は減った。

:N903i
:11/15 00:37

[9]ゆきな
それから―
あたしはいつしか、ペラペラの紙に写る翔しか見れなくなってた。お互い忙しくなって、時間も合わなくなって、会える機会は減っていった。誌面に写る翔の笑顔は、あたしにだけ見せていたものじゃなくなって…一人前に輝いてた。雑誌の特集に載るだけで、うれしさと同時に不安も覚えた。この雑誌を多くの人に見てほしい。でも雑誌で人気読者モデルになれば、あたしなんて…絶対フラれる。いつも、そんな思いと隣り合わせでいた。
次第に私の予想をはるかに越え、翔はどんどん人気もでて、表紙を飾るようになって、ブログを始めれば、たくさんの読者からコメントがあった。中には事務所にファンレターや贈り物が届く事もあった。ちょっと前まで、あたしの隣で普通に笑ってた翔…ちょっと前まで、普通に街中をデートできたのに…翔が遠い存在に感じる。この時なら、もしかしたら、あたしに勇気さえあれば、堂々と翔の彼女としていられたのかもしれない。でも、あたしはそんなに自分に自信がなかった。できるだけ翔といたい…でもいられない…あたしなんかが翔の隣を歩いてはいけない。そんな思いが、自分を追い詰めていった。翔はそんなあたしに気を遣い、『俺は、この仕事しててもずっとゆきなの事を想ってるから。』とか言ってくれたけど、翔の雑誌を見るたび、その言葉が信じられなくなってく自分がいた。翔の周りには綺麗なモデルさんもいるだろうし…あたしといる時間より、モデルさん達といる時間が長いに決まってるから。そんなんで嫉妬をする自分もいた。でもいくら嫉妬しても、キリがない。
だったら最初から嫉妬しないようにしよう。そう決めた。最初は無理だったけど、制御してるうちに、それが普通になってた。
でも翔はいつもあたしに優しい言葉をかけてくれたし、会った時は必ず抱きしめてキスしてくれた。その時だけが唯一、翔の特別な存在なんだと思えた。
翔といると安心できた。会えなくても、お互いの気持ちに変わりはない。翔がどこに行っても、どんな環境になっても、二人の愛は付き合ったあの頃から変わらない。むしろ大きくなってくだろうと疑いもしなかった。
でもその考えが甘いというのを知ったのは、ずいぶん後の事だった。
:N903i
:11/27 00:28

[10]ゆきな
あっという間に―
それからも二人それぞれ忙しい日々を送っていて、季節はいつの間にか冬が過ぎていた。会う事も少なくなり、でもだからこそ、大切さが分かったりもしてた。あたしにとって翔は、人生に必要不可欠になってた。でもその想いと裏腹に、あの時は突然やってきた。
久々に会って、話たい事、聞きたい事たくさんあったのに、その日翔は深刻な面持ちのまま、魂がぬけてるような感じだった。何を言っても反応が薄い…あっという間に二人でいられる時間が終わろうとしていた…翔はあたしを駅まで見送ってくれた…その時、やっと翔が自分から重い口を開いて、かすれるような声で言ったんだ。
:N903i
:04/09 00:58

[11]ゆきな
―沈黙
『…あのさ、俺ずっと言えなかった事があるんだ。』翔のあまりに真剣な顔つきに、あたしは少し笑いながら、答えた。
『何(笑)?』
『うん…実は俺、親父の転勤で引っ越す事になったんだ。だから高校もあっちの高校行く。そしたら、もっと会えなくなるだろうし、遠距離とか…ゆきなにこれ以上、寂しい想いさせたくないし、別れよう。もっと、早く言わなきゃって分かってたんだけど、なかなか言いだせなくて…ごめん。本当にごめん。』
翔の目から涙が溢れていた。あたしは、翔に告白された時のように頭が真っ白になり、翔の言ってる事がしばらく理解できなかった。今起きてる事をゆっくり頭の中で、整理しようとした。
そして、気が付くと涙を精一杯溜めて、あたしはこう一言言ったんだ。
『分かった。うん。今までありがとう。』
それしか言えなかった。
そしてすぐその場から、去り、駅の階段へと向かった。あたしの後ろ姿を泣きながら見送る翔の姿が感じ取れた。
あたしは階段を降り、翔の視界から外れると、そのままその場に座りこんだ。
あまりに、突然で呆気ない別れだった。
まだ中学生の私達には、こういう別れしかできなかった。
もっと私達が大人だったら…そんな思いと涙だけが溢れてきた。
:N903i
:04/10 23:50

[12]ゆきな
―絶頂
大好き。
そんな想いの絶頂で、これから二人で同じ未来を同じペースで歩いていけると信じてた…
そんな私達に訪れた、『別れ』という名の突然の運命。
ただ私達の未来にとって、この別れは序章に過ぎなかった。これから幾度となく押し寄せる辛い別れに翻弄されていくなんて知るよしもなく…
翔から、別れを告げられ…3日…翔はより遠くの地へ引っ越していった。
私は、まだ3日前から気持ちの整理ができていないまま、翔の見送りに行った。『本当に突然でごめん。いつも勝手な俺に付き合ってくれて、今まで本当にありがとう。俺、向こうでも頑張るから。ゆきなも頑張って。あと、図々しいとは思うんだけど…俺、絶対またこっちに戻ってくるから、その時は、また付き合ってくれないかな?』
『あたしこそ、楽しい思い出をありがとう。身体に気を付けて頑張ってね。私、待ってるから。翔の事ずっと想ってるから。約束だよ?』
…戻ってきたら、また付き合おう。そう約束を交わし、最後に翔はぎゅっとあたしを抱き寄せ、優しくキスをした。
あたしはそんな翔に、冷たく接してしまった。だって、最後に…しかもこんな突然の別れ際に、平常心でいられるわけもなく…そんなに優しくされたら、別れが辛くなるだけだから。あたしは、子供だった。辛いのはあたしだけじゃない。翔の方が辛いはずだったのに…あの時はそんな事考える余裕なんてなかった。
ただ保証のない約束だけを、信じる事しかできなかった。
:N903i
:04/11 23:17

[13]ゆきな
別れから1週間―

毎日のように翔から、メールと電話がきた。
でも私は、翔からの連絡を一切シカトした。
メールを返信したり、翔の声を聞いたら、きっと依存してしまう。離れられなくなる…そう思っての事だった。
お互い、受験をすぐに控え、これから新しい道を歩いていかなければならなかった時。私は翔に甘え、頼ってばかりの自分から卒業しなきゃいけなかったし、翔には私を想う事よりも、受験勉強や読者モデルとしての活動に一生懸命になって欲しかった。それは、きれいごとだけど…私の頭の中はぐちゃぐちゃで…とりあえず、翔を忘れなきゃ。そんな一心で、毎日を送るのが精一杯だった。
次第に毎日きてた翔からの連絡は、来なくなった。
:N903i
:04/14 15:14

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