■歌えなかったラヴ・ソング
織田祐二


最終日のゼミは長く
俺たちは汗ばみながら
胸の中で卒業までの日々を数えてた
就職のコネクションをひけらかす仲間の声が
ビルに映る曇り空のように
ふたりの恋を押しつぶした

90年代のラヴ・ソングを贈ろう
消えちまったあの涙に
俺の中でそっとそっと
歌えなかったラヴ・ソングを歌おう
あの日の俺の場違いな 若さの国境を越え
忘れそうな微笑みが すれ違う次の夜も
もっともっときっとあの切なさに届くまで

国道沿い風は強く 人ごみに俺は流され
もがきながら誇れるものを今日も探してる
行き過ぎるだれも彼も終点は同じ気がして
なぜか急に叫びたくなった
ため息だけが熱い街で

90年代のラヴ・ソングを贈ろう
まぶしすぎたあの瞳に
俺の中でそっとそっと
歌えなかったラヴ・ソングを歌おう
見えない夢を抱きしめた昨日の俺たちのため
疑ったものすべてが許しあえるその時まで
もっともっときっと傷つくたびに判るから

90年代のラヴ・ソングを贈ろう
消えちまったあの涙に
俺の中でそっとそっと
歌えなかったラヴ・ソングを歌おう
あの日の俺の場違いな 若さの国境を越え
忘れそうな微笑みが すれ違う次の夜も
もっともっときっとあの切なさに届くまで




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