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ある日の午後(銀魂)
by 小梅  
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ある日銀さんが言った。

「ゴキブリってよう…その気になれば喰えんじゃねえか」

はっ?

それまで掃除をしていた手を止めて、僕は後ろのソファででくつろいでいるであろう彼を振り返った。
するとそこには、仰向けになって手足をカサカサと動かすゴキブリをじっと見つめている彼がいた。
その目付きが尋常じゃない。
半開きで、しかも白目を向いている。

「絶対喰えるよコイツ。なぁ新八」
「ちょ、ちょっとどうしたの銀さんー!!?」

慌てて駆けつけ、彼の両肩を持ってガクガクと前後に揺らした。
それでも虚ろな目はゴキブリを追い続けた。

お、おかしい!
朝にケーキを作ってたから糖分はギリギリ足りてるはずだ…!
一体どうして…

「どうしたアルか新八」
「か、神楽ちゃん!」

酢こんぶをカジリながら現れた彼女が、まるで救世主のように思えた。
正気のない銀さんの顔を突きつけ、必死に説明した。

「ぎ、銀さんが急におかしくなったんだよ!どうにかしてこのゴキブリを食べようとしてるんだ!」
「そら大変アルな」

そして酢こんぶを食べ終わると、彼女は両手にペッペッと唾を吹きつけた。

「私に任せるアル」
「ぎ、銀さんを治せるの神楽ちゃん!?」
「ふっ」

頼もしい彼女の笑みに、僕は事の成り行きを見守る。
彼女の手が銀さんの頭に優しく、ゆっくりと触れた。
次の瞬間、掴んだ頭を凄まじい勢いでゴキブリに叩きつけた。

「そんなに食いたきゃ勝手に食うアルゥゥゥゥゥゥ!!!」
「神楽ちゃんそれはダメェェェェッ!!!」



そこで悪夢は終わった。
昼下がりの事務所で、僕はうたた寝をしていた。

な…なんだ夢か…。

「だ、大丈夫アルか新八…」
「おい、ひどい状態だぜ」

銀さんと神楽ちゃんが僕を心配そうに覗きこんでいる。
ひどいうなされようだったらしい。
少し照れながら「大丈夫だよ」と言うと、二人は一瞬顔を見合わせ、感心するように僕を見た。

「新八…お前のこと見直したアル」
「顔にゴキブリがひっついてんのに平気だとは…やるじゃねえか」

――って、何ィィィィィ!!



END


2009/03/17
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