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あなたに還りたい
by サヨリ  
R指定:無し
キーワード:アシュルク
あらすじ:あなたと交わした約束は…。
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「…できればさ、音譜帯じゃなくてローレライの所じゃなくて、…アッシュに還りたい。」


ルークが儚い笑みを浮かべて、もう体温がなくなった存在を抱き締める。


そのルークの嘆願に答えるかのように彼の周りに光の結晶が乱舞し、やがては一つの大きな渦になった。


『………人間の理によれば、もうすぐそれは叶うだろう。大爆発と呼ばれるもので』


穏やかに、しかし哀しみを含んだ声が囁いた。


「………そっか。俺、形は違うかもしれないけれど、還れるんだな。」


『……我が同位体よ。我が愛しき地上での片割れよ、それでよいのか』


「………いいんだ。だってアッシュが生きることが出来る。……好きな人の幸せを望むのはおかしくないだろう。それに、アッシュにはナタリアが待ってるんだから……」


『……………』


―――なら、ルークの幸せはどこにある?


崩壊する瓦礫は、その光の渦に呑み込まれていった。






――――あれから三年。


あの『約束の場所』で、『ルーク』の記憶を抱えた『ルーク』いや、アッシュが仲間達に迎えられた。


ルークではなくアッシュだと理解した途端、茫然自失、といった様子でティアがセレニアの花に埋もれるように倒れこむ。


「…私、約束したのに…ずっと見てるって…ずっと待って………っ」


そんなティアを支えているナタリアも困惑気味にアッシュを見上げ、呟いた。


「『アッシュ』ですの…?」


「…………………ああ」


ナタリアは一瞬歓喜の表情を浮かべたが、彼女はハッと誰かの面影を探すかのように視線を彷徨わせ、ティアの肩を支えていた手を震わせた。


「………おかえりなさい、アッシュ。………る…ルークは、後から来るんですわよね?…そうですわよね?そうだと言ってくださいませ!」

懇願するようにナタリアは矢継ぎ早に言い、ティアから離れるとアッシュの外套を強く握り締めた。

「……ナタリア」


そんな彼女達の後ろには、大粒の涙を零して子供のように泣いているアニスと、無表情にアッシュを見つめているジェイド、アッシュに背を向けて決してこちらを見ようとしないガイの肩は震えているように見える。


「………やはり、還ってきたのはあなたでしたか…」

「…………嘘、だ」


アッシュは、そんな彼らからに答えるべき『答え』を持ち合わせていない。

静かに目を背けて空を見上げた。


「………ルーク、お前は俺に還りたいと言ったな、なら何故俺の傍にいないんだ。」


アッシュは胸元の外套を握り締めて、『自ら』に問い掛けた。


―――その時、アッシュの記憶の中の『彼』が、微笑んだ。




―――ここにいるよ。
いつだって呼んでるから。


ルークの声が囁いた。

end


2009/08/12
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