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君ノ花
by ろここ  
R指定:無し
あらすじ:ロキグレ:些細な楽しみが消えてしまったグレイを元気づけるように抱き締めるロキ…。そんな二人の甘く切ないヤリトリです。
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いつもギルドに行く途中の道端に咲いていた小さな花。

柔らかい赤をしている小さな小さな花。

小さいのに一人で強く咲いているその花が好きだった。


そんな小さな花を歩きながらいつも横目で見てギルドに行くのが
秘かな楽しみのひとつ、


だったのに。




君ノ花



「どうしたの?今日、元気ないね」

そう後ろから話かけられて、上を向く。

今は、ロキに後ろから抱き締められて座っている態勢。

いつもなら嫌がるんだけど、今日はそんな嫌がる気も起きなくて。

むしろ、もっと抱き締めて欲しかった。


「…別に」
「別にじゃないだろ?」

俺の後髪にキスを落としながらロキは言った。


デザイン的な家具を揃えてあるロキの部屋。

黒いソファーが二人分の重みで時々きしむ。


「‥何でもねぇよ」

ロキはよく、俺の心境を透かして見てるかのごとく質問してくる。

何となく、質問に答えたくなくて、
そんな言葉を放って俺を抱き締めてるロキの腕を離した。


何でもない、訳じゃない。

俺の心境を察したのかロキはそっとまた抱き締めて、
そのままぽすんとソファーに倒れこんだ。


位置的に、ロキが俺の下敷きになってしまっている。

重いだろうとソファーから下りようとするが
ロキは抱き締めてる手を今度は離さなかった。

「…しばらく、このままでいようよ」


多分また、悟られてる。

そう思いながら無言でロキに寝そべる。

抱き締められているのにつられて、手で軽くロキの服を掴んでしまう。

まるで、子供だ。

分かってるけど、ついついしてしまう。


俺に何かあったことぐらい、ロキは容易く察しているだろう。

でも、ロキは必要以上聞かずに抱き締めてくれてる。


それが、ロキの気持ち。

俺が自分から話すのを待ってくれている。

だから、俺はロキの気持ちに答えなきゃいけない。



「…いつもな」

俺がゆっくり話し初めても、変わらずそのまま抱き締めてくれてるロキ。

そのロキの腕に手を添えて、手と手を絡ませてみる。

少し恥ずかしいけど落ち着く行動、いわいる俺のちょっとした癖。

「俺が話してる花…覚えてるか?」
「うん」

「その花がな…」
「うん」

俺が言う一言一言に対して相づちを打ってくれるロキ。

ひとつひとつ、ちゃんと聞いてくれてると言う実感が湧く。


「…‥今日…誰かに踏まれてた」


いつものように花を見た。

でも、目に写ったのはあの強く咲いている花ではなく、

ドロで汚れて茎が折れ曲がって花びらが散っていた花だった。


ぎゅっとロキの手を握ると、ロキはぎゅっと俺の肩を抱き締めてくれてた。

道端に咲いているただの花だけど、何となくショックだった。


「…‥グレイ」

まるで子供をあやすような声で名前を呼ばれる。

少し、自分でも赤くなるのがわかったから顔を向けずに小さな声で返事をした。

「花はいつか枯れちゃうだろ?

…何にも終わりがあるんだ


ただ、その花の終わりがそれだっただけだよ…?」


わかってる。

だけどわかんない。

「…なら、ロキは俺が殺されたらどうなんだよ‥?」

何にも終わりがある。

なら、おれだったら?と疑問が浮かび思わず口にしてみる。

口にして後悔をした。

ロキは死ぬとか言う話は嫌いだから。


「俺も一緒に死んであげる」

ロキの言葉に驚いた俺は、反射的に顔をあげてロキを見る。

「グレイを一人になんてしない」

そう言って、俺の髪にロキの手を絡めるように撫でてきた。


「だから、寂しくないよ」


普通ならこの答えは間違っているのだろうが、

俺にとっては何より嬉しい言葉でもあった。


無意識にポロっと涙が出てきたらロキはその涙を拭き取ってもう何回も言い合った言葉を言った。



「好きだよ、グレイ」





END


2007/03/08
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