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もう一度、君に会いたいんだ
by 海の子
R指定:無し
キーワード:家庭教ヒットマン リボーン
あらすじ:たとえお前の望みがひとりであることだとしても・・・!!
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「別れよう」
そう淡々と告げられた次の日、あいつは俺達の前から、忽然と姿を消した。
「・・・恭也が、いなくなった・・・!?」
そんな連絡を受けたのは、俺がイタリアへの帰国準備を済ませたちょうどそのときだった。電話口から聞こえるのは、狼狽しきっているツナの声だ。
(は、はい!昨日の夜から連絡が途絶えているそうで・・・っ。さっき草壁さんに、委員長の居場所知らないかって・・・!!それで、おれ・・・)
「いいから、まずは落ち着け!・・・ほんとうに、いねえのか・・・!?」
帰ってきたのは無言の肯定だった。気を抜くとすぐに震えてしまいそうになる声を必死で隠し、俺は言った。
「とにかく今学校だろ!?俺も向かうから、ちょっと待っててくれ!!」
がちゃんと少し乱暴に受話器を置く。そのまま動けなくなった俺の脳裏に浮かぶのは、昨日の夜の情景だ。
(は、はあ・・・!?別れるって恭也、どういうことだよ・・・っ)
夜の応接室。そこに珍しく恭也から呼び出してきたと思ったら、開口一番にそう切り出された。
別れよう、と。
(・・・そのままの意味だけど?もう、終わりにしたいんだ。この関係も、何もかも)
変わらず相手の口調は冷静そのもの。いや、冷静なのはいつものことだけれど、今日の声音にはそれに加えて残酷なまでの鋭さを感じさせる。
(何で・・・急に!?他に好きなやつでも出来たのかよ!!)
(関係ないでしょ。・・・僕の話はそれだけ。今まで世話になったね・・・さよなら)
無理やり話を打ち切ろうとするかのように、そこで恭也はくるりと背中を向ける。カッとなった俺は、激情にまかせてそんなあいつの肩を無理やり引き戻した。
(・・・!!)
(んなこといわれて、納得できっかよ!!)
そのまま、驚いて身を硬くする恭也の唇を半ば強引に奪う。
(!!・・・や・・・め・・・っ)
しかし恭也は次の瞬間、俺の体をトンファーで横殴りにした。
(ぐあ・・・!!)
あまりの苦しみに、俺の体はそのまま応接室の床に崩れ落ちる。
恭也はぐいっと制服の袖口で己の唇をぬぐうと、腹部を抑える俺に冷たく言い放った。
(・・・ばいばい・・・)
応接室の前には、ツナと山本、獄寺、笹川(兄)の姿があった。
「あ!ディーノさん!!」
俺の姿を捉えて、いち早くツナが声を上げる。
「ツ、ツナ!!恭也は!?」
ぶつけた疑問に、ツナは泣きそうな顔で首を横に振る。駆け寄った俺に、無言で一通の手紙を差出した。
「・・・ディーのさん宛です。応接室の机においてあったって、さっき草壁さんが・・・!」
綺麗に封のなされた手紙には、これまた几帳面の字で、雲雀 恭也を書かれている。裏を返すと、確かにあて先は、自分になっていた。切手は貼っていない。
俺は少々乱暴に封を切ると、中身を開いた。あまり文面は長くない。中の文字も、やはり丁寧だ。
<ディーノへ。さっきはごめん、いきなりあんなこと言って、びっくりしたよね。別れたいってのは本当。でも、あなたを嫌いになったわけじゃないんだ。それだけ、知っていて欲しかった。手紙を残すのはルール違反なんだけど、どうしても伝えたくて・・・僕のことは心配要らない。探さないで。さよなら・・・PS、約束破って、ごめん>
知らず知らずのうちに、手紙を持つ手が震えた。何なんだ、これは。
「ディ、ディーノ・・・さん?」
まだ内容を知らないツナが、おれの様子の変化に気付いて恐る恐る声をかける。
俺は次の瞬間、手紙を片手に応接室を飛び出していた。
「待て、馬鹿ディーノ!!」
その時、俺の目の前にひらりと一人の赤ん坊が音も無く着地した。知っている。赤ん坊だとなめて、かつていろいろひどい目に合わされた。
アルコバレーノ(虹色の赤ん坊)の一人。ボンゴレ最強の殺し屋、リボーンだ。
「リ・・・ボ・・・!?」
「頭を冷やせ。お前一人が飛び出したところで、状況は何もかわんねーぞ」
リボーンの言葉に、俺は歯噛みする。悔しいが確かにそうだ。一人で突っ走ったところで、いい事など一つも無い。
「ザンザスとバイパーを連れてきた。雲雀の捜索に協力してくれるそうだ」
リボーンの後ろから、二人が姿を現す。ツナたちに一気に緊張が走った。
「ツナとザンザスの超直感、バイパーの粘写で雲雀の居所を探る。本人の意思がどうあれ、あいつはいまやボンゴレの一員だ。行方知れずのままでは済まされない。・・・ツナ!!」
「は、はいいい!!」
ツナにリボーンは、一枚の地図を手渡した。そして聞く。
「ツナ。お前の勘では、雲雀は今、この並森にいるか?」
リボーンの問いに少し諄々したのち、ツナは自信なさげにうなずいた。
「だったら、今からザンザスとこの地図を見て気になるところを片っ端からチェックしろ。その後、そのポイントをバイパーに詳しく探らせる」
「え・・・お、おれ?」
「お前に流れるブラッド・オブ・ボンゴレが、真実を教えてくれる。やれ」
二言は許さないといった様子で言うリボーンに、ツナは弱弱しくうなずくと、ザンザスとともにいわれたとおりの作業を開始した。
「ディーノ。息急ぐんじゃねえぞ」
リボーンはそういうと、ツナたちのほうへと背を向けた。
「・・・わかってる・・・!!」
俺はそうはき捨てると、一度、応接室の壁を力の限り殴った。
なんで、こんなことになった。
恭也。お前はどこへ行った!?
目の前に浮かぶのは、去っていった漆黒の後ろ姿。
(ツナを頼むぜ。雲の守護者)
約束を、破らせやしない。
あんな紙切れ一枚で、納得できっか。
会いたい。
会いたい。
会いたい。
もう一度、君に会いたい。
2007/09/30
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