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無力な君に乾杯
by 翼
R指定:---
キーワード:テニスの王子様、庭球、版権、跡部、嫌がらせ
あらすじ:嫌がらせを受ける主人公
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ここ数日、何とも言い難い日が続いていた。強いて言うなら、嫌がらせの毎日と言うべきだろうか。
朝、上履きに履き替えようと下駄箱に行けば靴は無く、代わりに土と塵が入れられていた。ふと近くにあったゴミ箱を覗いてみれば、中にブスやら馬鹿やらと書かれている私の上履きがあった。しかも画鋲が何十個も突き刺さっている。夏に買い替えたばかりだというのに、既に上履きという原型を留めていない上、役目を果たしそうにもない。はぁ、と溜め息を吐きながらゴミ箱の蓋を閉めた。あの上履きはあのまま捨てて置くことにしたのだ。上履きの代わりにスリッパなら事務室に行けば借りられる。そういった心境だった。これが朝の嫌がらせ。まだ序章といったところだが。
昼。選択授業で教室に戻るのが遅くなった私に飛び込んできた光景は何とも凄まじいものだった。一つの机が見るも無惨に荒らされていたのだ。その被害を受けた机の持ち主は、矢張り私。机の上には丸々一つゴミ箱が置かれ、椅子は分解され、兎に角悲惨だった。机の中に入れておいた教材は勿論のこと、机に横(フック)に掛けておいた体育館シューズまでも無くなっている。よくもまぁここまでやるもんだと違う意味で感心してしまう。
一人机を掃除をしていたら厚化粧をした女子たちが急に私を取り囲んだ。そして一言。ちょっと付き合ってくれる?出た、と私は内心思った。これが初めてではないのだけれども、呼び出しは嫌なものである。勝手に嫉妬されて、勝手に言い掛かりをつけられ、挙げ句の果てには暴力だ。かといって頭を横に振れば逆ギレされる上、強制的に連れていかれる。なので私は渋々頷いた。
着いた着所は矢張り定番の屋上。呼び出しで着く場所と言ったら屋上が裏庭、それか旧校舎か倉庫。兎に角人通りの少ない場所である。呑気にそんなことを考えていたら、いきなり頬を叩かれた。一瞬鋭い痛みが走ると、じーんと痛みが広がった。次第に頬に熱が集中する。それと同時に彼女たちからの罵声の嵐が私に降り注がれた。調子乗ってんじゃないわよ。とか私の跡部様に近づくな。とか。因みに私と跡部は幼なじみという名の腐れ縁。別に付き合っているわけではない。(まぁ向こうはお前は俺様の女だとかほざいているけれど。)なので決して私からは近づいていない。逆にあいつから近づいてきている。だけどこれを彼女たちに言ったら逆ギレされると思うから敢えて言わない。そして数十分程経った頃、やっと気が済んだのだろうか彼女たちは屋上を後にした。
はぁ、と溜め息が零れる。すると又、ガチャリと屋上の扉が開いた。今度は一体誰よと言わんばかりに後ろを振り返る。其処に居たのは私への嫌がらせの原因とも言える、跡部景吾が立っていた。よぉ無様な姿じゃねぇか。と奴は笑いながら言う。そもそもの原因はあんたよと睨みながら言うと、奴は苦笑した。すると、そのまま私の隣に座っては、手を叩かれて赤くなった頬に添えた。氷のように冷たい彼の手が少しばかり気持ち良いと思えた。隣から小さい声で御免なと聞こえたのは空耳だろうか。そして添えられた手が震えているように思えたのはただの錯覚だろうか。守ってやれなくて御免と唇を噛み締める彼の顔がふと、目に浮かぶ。確かに嫌がらせは嫌だ。毎日続くと思うと背筋がゾッとする。でもそれ以上に彼の隣を誰かに譲るのが嫌だと思った。その時の私は不本意ながらも跡部の隣が居心地が良いと思えたからだ。
無力な君に乾杯
(別に私を守らなくとも貴方さえ居れば、私はそれで良いと思う)
2008/01/06
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