第1回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン決定戦


審査員選評



ダーザイン

この企画を立ててくれた月刊未詳のピクルスさんや只野さんに感謝を。この企画を実際に動かしてくれた、ゆうなとピクルスさんら技術スタッフに感謝を(彼ら技術スタッフの作業は大変なものでした)。そして、作品を投じてくれた皆様に感謝を。
今回名前が漏れ、作品を閲覧できない状態にあるものにも多数良作があり、現代詩手帳でも月刊未詳でも文学極道でもどこでもいいので、せっかくの良作、あちこちで公開していただきたいです。

特に、新鋭詩文学とは何かというような議論は予めなく、良い詩を選べばそれで良い、というスタンスで始めた投票制の企画ですが、私個人においては、ポエムから超現代詩まで、様々な詩を、良ければなんでも顕彰したいという姿勢なので、某かのイデオロギーで選抜したわけではないです。

ただ、自分が選んだ物の結果を見て、ポジ・ネガを超えた人間力のある人を選んだと思う。人間力のある人には筆力も伴っている場合が多いんじゃないのか。

情熱的な美少女萌えの日本アルプス登山家の益荒男や、王道・現象学派詩の新境地を開いた者や、可愛い猫のにゃんたろうに天才的大詩人の事情を斜に見させる実に上等な文章、まりあさま! 萌え と、膝枕を要求したくなるようなやさしくて暖かい作品、最後に列挙しますが、その列挙に名前が無い人にも、多数、感銘を受けたものがありました。
また、厳しい話になりますが、この高貴な場所に、なんでこんな程度の低い物を投稿するんだ、読む者の手間を考えろ、応募する前に、月刊未詳21と、文学極道月刊優良作品と年間各賞のハイレベルくらいリサーチしろと、怒りを覚えるような作品も多数投稿されました。投稿する前に、真の現代詩の最高峰の現場である、文学極道年間各賞や月刊未詳のレベルくらい、ちゃんとリサーチして読んでいただきたいです。

「六月を雨に少女の祈る」 森下ひよ子

森下ひよ子さんが誰なのか知らないが、「お前ら審査委員のおつむの程度は解るぜ、うけ狙いで書いたら受かるんだからな、ぎゃは!」とか、言いそうな気もするのだが、それでもかまわない。うけたんだからいいんじゃないのかと。
炸裂するロリコン魂に、臆面もないあざとさで空間軸と時間軸を持たせてみました、これでどうよ? と。
「少女」と名指されているものは、歴史上果たされることのなかった事柄への執着であり、個人的な思春期の果たされることのなかった事柄への執着であり、当然性欲であり、語り手の孤独であり、森羅万象、ありとあらゆるもののうちに宿るイデーであり、希求の対象であると同時に希求する主体であり、そもそも、2項対立を超える希求である。荘厳な伽藍のように、日本アルプス登山から朝鮮半島分断の悲劇や金閣寺炎上まで、構造の立て組みは実に見事であり、大変な力技である。世界とは認識であると述べた直後に、世界とは行為によって現成すると、打ち消されているが、この作品の中に重篤な真実があるとすれば、血の出るようなロリコン、イデーの希求である。それは、存在論的分裂から、存在の全体性を希求する、大変正直で正常な事柄であると私は思い、強く共感する。

「無題(1)」たなか

生々しく、禍々しい。この人の家中では絶えず原子炉がメルトダウンし続け、家中に張り巡らされたピアノ線で烈断される恐怖に曝されながら、永遠が叫ばれている。チェルノブイリ発サスペリア行きのおぞましい実存様態。
驚愕を与えることは文学の主目的のひとつであるが、これは見事な作品であると思う。神的なるものの定義にルドルフ・オットーが挙げている「戦慄」という言葉を思い出した。もうひとつの投稿作も傑作でした。

「水葬」 谷竜一

得体の知れない散文詩全盛の世の中で、見よ、この美しい詩文を。抒情詩が、越境しつつ、源郷していく。水の描写による母の、女性の、郷里の、そして世界の混濁、溶融。力作である。

「子供のこと」 吉田群青

生まれてくる命も、生まれることのなかった命も、全てを優しく抱きとる語り手の穏やかな眼差しに癒されました。今回の企画で、個人的に、最も心地よく、読ませていただけたことに感謝した作品です。吉田さんのもうひとつの投稿作も素晴らしい作品でした。

「でたらめ」泉ムジ

〜こんなでたらめな物はポエムに違いない〜。笑った。そのでたらめな書付はきっと凄い傑作なのだろう。天才的大詩人・一条さんの部屋を監視している猫じゃないかと想像してまた笑った。文章として大変上手である。猫とポエマーの主客が入れ替わるところなど絶妙であった。泉ムジさんのこのところの詩はとても可愛いらしくて素敵であるが、この視も実に可愛らしかった。ただキュートなだけではなくて、あの天才、一条氏を踏まえて、それを使いこなすことも出来るという、素晴らしい離れ業であった。

「水を捨てる」宮下倉庫

源泉から下水道へ。命の流れの中で立ち止まり、そして流れて行く者を描いたのだろうか。宮下さんの文章には独特の距離感があるのだが、その距離感が、肌触りの次元にまで肉薄しているのを感じた。筆力ということではぴか一であろうが、読み手を選ぶ筆致ではあるかなと思う(たいていの場合、読み手は堪え性がなく、予め疲れている)。だが、現象学派とでも言うべき宮下氏やコントラ氏の言語実践は真の現代日本文壇の王道とも言うべき新境地を開いたものであると確信しているので(冒頭に述べたように、そういう詩でなければ評価しないというわけではない)、いっそうの御活躍を期待しております。もう一つの投稿作もすばらしかったです。

他に、私が特に感銘を受けた詩人は、プラスねじさん、Arさん、鈴川夕伽莉さん、はらだまさるさん、中村めひてさん、ホロウさん、田崎さん、ヨルノテガムさんなど、多数おりました。

島野律子さんについてはとても美しい文章だと感じたのだが、ずっとこのスタイルでおられるのだろうが、改行した方が良いんじゃないかと思った。

良かった人、気になった人については、時間がかかると思うが、後ほど短い感想を書き足していていきます。暫くお待ちください。

それから最後に、ゆうなに。何年にも渡り、無賃で大変な労力を割いて文学極道の技術を賄ってくれている文学極道技術スタッフの「ゆうな」であるが、今回、この企画で、表面に顔を出して、ゆうなの特別賞を出してくれたことがとても嬉しかったです。ゆうなは謙称していますが、一流大学を出て文学を専攻し、今は諸事情で書いていないが、小説を志していた文学徒でもあります。益荒男というとキモイように勘違いされると拙いので、文芸新興のために、貴重な人生をついやしてくれる漢だと言っておきます。

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