[1] ひと雨ごとに11月
By あみね
11-08 07:29
 
時雨空から
細かい雨が降り始めていた

軽く靄った朝の街を
青年の後ろについて
歩いていく

コンビニで
傘を買わなきゃ
風邪ひいてるから

仕事帰りの
ゲイボーイの歩調は
思いのほか速い
がに股歩き

風邪っぴき青年の頭に
白黒ギンガムの
キャスケットをかぶせ
靴ずれのできそうな踵と
格闘しながら
左足、右足
せっせとあやつる

わたしたちは黙々と
駅を目指した

隣り街に住む青年は
キオスクで傘を買い
わたしの頭には
キャスケットが
舞い戻る

ちょうど間に合った早朝の電車
にっこり顔で
シートに腰掛け
抜けない刺を
アルコールの余韻に
浸たしていく

ジプシー生活に
あこがれていた夢は
引越しを繰り返すことで続き
来年に暮らす街並みを
頭にめぐらせる

好奇の視線が半分になり
青年が降りた後の
居眠りしそうな意識をこじ開け
次の駅を
寝過ごさない準備に
専念する

駅の階段を下りると
軽く靄った街は
ぼんやりと暖かく
立冬の朝は
ドーム型をしていた

ローファーの踵を踏みつぶし
通勤途中の人々に紛れて
足速に歩く

平たいこころになれないまま
ゆうべ見た上弦の月に
別れを告げる

声が嗄れるほど
猫たちを叱りとばして
散乱した室内を片づけ
吐き捨てた言葉や
ざらついたこころを
覆いつくすように
わたしは布団をかぶった

平らな気持ちになれるまで
眠っていよう

ざらざらな螺旋の上から
いくつもの弧が
落ちていった
 
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