返信
(1)
連作歌会 さヾ波
5首以上の連作をお寄せください
(2)
[ 病 ]
行かなくちゃ
井上陽水「傘がない」
微熱朦朧頭を巡り
病むほどに
思われるのは幸せか
笑わなくなる
君を横目に
台風の叩く
雨音さえ退けて
子猫の悲鳴
聞こえ眠れず
隠れたらうずくまり
ただ待つだけと
病院嫌いの猫に教わり
酒薬死にもゆだねず
生きている
たあだ 生きてる
俺を連れてけ
(3)
『一線越える』
ほしいのは鋭く研いだ剣よりも手製のやじりで衝くようなキス
唇をあわせたままで手を握り締めても離れてしまう気がする
このキスがオープニングになればいい どうやったってエンディングだから
王様に褒美をもらうような気で友達の君と一線越える
メープルシロップかけたバニラアイスみたいな君の声とイキ顔
なんでいま君と風呂なんか入っちゃっていつも通りに話してんだろ
ときどきの餌があるなら飼われてもいい気がしてる 馬鹿だなと思う
2008/1/27 2008
町田アキラ HP 編集
(4)
『わがまま』
「朝焼けの色だね」と言う声はいい でもこのピンクパールを褒めて
日本人や女ではなく君はふと私をドラクエ世代に入れる
食べかけのアラビアータを下げに来て 頼んだ人は店を出ました
理解さえしてればいいと思ってた MEN'S NON-NOを読む人だから
ベランダに出てみたけれど染みついているはずもないLARKの匂い
(5)
『リピート』
目覚めると海溝がある 清らかな紫色の海溝がある
地図上の海岸線が凝固して蝉がボクタチボクタチと鳴く
「万歳!」が研ぎ澄まされて一本のヒマワリになる 君は、君は、
真っ白な帽子の行列は続く真っ白な彼女を呼びながら
青空に投げたレモンの叫び声「女でしょうね」「女でしょうね」
(6)
『toward』
墨汁を垂らしたような海からは コーラの缶が贈られてくる
煌々とライトを照らす夜の漁 ひるんだ月は潮に捕まる
わざとだよ 波打ち際にサンダルを置いていったの 早く持ってけ
めり込んで砂が縁取る足の指 角を失した消しゴムのよう
明け方の星の慟哭沈めたら コーラの缶を空に蹴り込む
(7)
[夜]
ああ、そっか。どうやらあたしはメスみたい。抱かれたい、ただ、それだけのこと。
君のこと大好きだから好きだから猫なで声で甘えていいよ
初めての君と迎える夜だから仔犬のようにじゃれついてきて
運動会
君にいいとこ見せようと2組の前だけ全力疾走
待ちぼうけ。夕焼け空が笑ってる。あの娘は来ない。来る。来ない。来る。
酔い潰れベッドの上で戯れた覚醒される夜の大罪
校庭の隅に埋めた小瓶まだ開封されないタイムマシーン
(8)
『午後のしゅうまつ』
サボテンに致死量の水をやりたくて/119にダイアルまわす
エフエムのラジオからラブ・バラードが流されている/かわいそうだね
夕刻のサイレンが告ぐ太陽の訃報に合わせあなたの訃報
「たましいは分別をして捨てましょう」火葬場裏の壁の張り紙
さようなら/震動だけが伝わったあなたの声で奏でた私
(9)
悪しき白煙に
愛を込めて
[煙草]
辛いなら
もう会わない
といって待つ
煙草はさんで
君の火と否を
これ以上増えたら
まずいと思われる
二箱半と
いけないでーと
すいません
そんな駄洒落も
言えんほど
諭してくれるな
逃げも煙草だ
真夜中に
女が泣いても
行かずして
煙草が無くなら
隣町まで
この指に
煙草があって
僕だから
言うしかないわ
I'm heavy smoker.
(10)
『夏の手』
白い壁
色とりどりの画鋲には
留められなくて
夜の瞬き
渇いたら身軽になれる
明後日も窓辺に
ドライフラワー揺れて
日めくりのカレンダーには
背を向けて
踵ばかりを潤している
フォルテシモ
フォルテッシモと呟いて
積乱雲は
山の縁から
水彩の絵の具も筆も
投げ出して
最果てに降る雨を
捕らえる
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