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楕円


甘い免罪符欲しがって
尻尾を追って廻るなら
善意に窒息するだけだ
仄かに巡る盲の水
知らない影の長さに怯えて
また黒猫が轢かれるのを見たよ
磔にした火傷の深さ
それを計るのではなく
石を積んで数えるよりも
せめて血が冷えぬよう
白い御花を握って
それを離さぬように
それは離さぬように
とぼとぼ詠唱する夜には
冴えた月が灯るだろう
端から果てまで
滲んでゆく水銀灯に
いちいちビックリして
いちいち御辞儀して
産まれ続ける光を想うなら
いつか
という距離ではなく
柔らかく結晶してゆく
どもりの時計の
ちくちくたく
昔日の太鼓に誘われて
もすこしだけの独り言
(こどもの瞳だった)
(シャツの裾を掴んで)
ではなくて
そんなじゃない
澄んでゆく春色の三角州
「ったの」
あの時に
呟いたかもしれない
同じ声
同じ静けさ
揺れているのは
浅はかに吸って吐いて
揺れているのは
円くなろうとして

今夜も
額に木の葉を付けましょか
横になって耳澄ませば
騒めく影を叱りつけて
ひとつずつ祈りながら
ひとつずつ円くなる
冷たい石の上でも
ほら、
寝息は
こんなにも暖かくて
こんなにもシンとして
そうして
目を瞑るのです
また明日
また明日ね
 


*

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