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[1] 小型ガスタービンにおける軸推力計算法
By 以下、名無しが深夜にお送りします
02-13 21:14
はじめに

 飛行中にターボジェットエンジンやターボファンエンジンの推力を知る方法は、いくつかある。その一つとして、ERP(Engine Pressure Ratio)が実際の値に近いものが得られる。軸出力型ターボシャフトエンジンにおいて動力計を用いず軸出力を知るために排気ガス温度、燃料流量、吸入空気流量などから求める方法が考えられている。
これらの方法については、前年度までの研究を通じて上記項目から軸出力を測定できることがわかった。本年度は、この方法について測定精度を高める方向で研究を行ってみた。              
また軸出力型ガスタービンエンジンにおいても上記ERPと軸出力との間に何らかの関係があれば、出力測定値として成り立つのではないかとの観点から研究を進めてみた。

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[2] By 以下、名無しが深夜にお送りします
02-13 21:16
実験器具

IGT60-I型ガスタービンエンジン(石川島播磨重工業株式会社製、解放一軸非再生式サイクル、遠心圧縮機および輻流タービン一体型、二段減速装置付(減速比8.78:1)、標準大気状態での最大出力60PS/40,000RPM、吸入空気流量約0.9kg/sec、圧縮比約2.7、タービン排気温度最大600℃、タービン回転数定格40,000RPM、出力軸回転数定格4,500RPM、75%〜100%定格回転数可変速式調速、使用燃料は灯油、燃料消費量最大出力時約55kg/h、起動式電動機使用、180番タービン油強制潤滑方式、潤滑油タンク容量約3L、12V直流モーター始動方式)

フルード式水動力計(株式会社東洋製作所製、容量100PS/7,000RPM、腕の長さ0.5965m)

熱交換機(株式会社三盛製作所製、風量0.9kg/sec、6列20段コイル、コイル外表面積約108平方メートル、パイプ全容積約16L)

ラペットRMS-11J型直視式電磁オシログラフ(光源はタングステンランプ11V10W、素子数6、光学長105mm、記録紙はコダック社リナグルフダイレクトプリント(タイプ2022、スペック111 35/8”×75’)最高記録線速度50cm/sec、記録紙送り速度;0.5・1・5・10(cm/sec)、刻時線;1/1・1/10(sec)、グリッドライン(2mm間隔、任意消去可能な太線が5本に1本入る)指針による記録紙残留指示、電源(@AC90-110Vまたは200-220V、50/60HZ、約25VA。ADC11-15VA、約15VA)

検流計MS-400BH(株式会社共和電業製、感度一様(±5%)の周波数単位DC 〜300HZ、感度45mm/mA/105mm、端子間抵抗30Ω、外部制動抵抗10Ω、最大許容電流25mA、非直視性±1%の最大振れ±25mm)

CG-6C型直流増幅器(シグナルコンディショナー)(株式会社共和電業製、測定点数6点、適当ブリッジ抵抗(120Ω、350Ω)、ブリッジ電流DC2V、平衡調整範囲【±5,000×10の−6乗】ひずみ以上、ゲージ率一定2、零点調整範囲±20%FS以上、レンジ(ひずみ【1、3、10、30×1000×10の−6乗ひずみ】、DC【1、3、10、30、100、300mV】、DC【1、3、10、30、100V】、標準較正器(設定レンジ×1 設定レンジ×1/10 ±2%)、応答周波数特性DC 〜1000Hz±5%、感度(10mA/1000×10の6乗ひずみ 10mA/1mV 負荷抵抗30Ω)、出力(非直線性±1%まで±10mA 負荷抵抗30Ω、非直線性±2%まで±20mA(負荷抵抗30Ω)、電源(AC100V 50〜60Hz(AC90〜110V)、DC12V 1A以下(DC11〜15V))

FT-2642形 周波数デジタルカウンター(株式会社菅原研究所製、入力感度(正弦波50mVrms(10Hz〜20KHz) 300mVrms(5HZ〜200KHz) 1Vrms(5Hz〜1.8MHz))、パルス波(200mVp-p(パルス幅10µs以上、デューティーファクター0.05以上))、最大入力100Vrms、回転数測定表示範囲5rpm〜180,000rpm(60パルス/回ピックアップ使用)、一般使用((表示10進4桁、2進1桁、記憶表示)、表示時間約0.8秒+デート時間(AUTO)及び無限大(HOLD)、消費電力約1gVA)

水柱マノメーター(写真のマノメーターは本書と無関係)

燃料ビュレット

サーミスター温度計(芝浦製作所製、測定範囲−50℃〜+50℃、2台使用)

制御盤(石川島播磨重工業株式会社製)

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[3] By 以下、名無しが深夜にお送りします
02-13 21:17
機構の説明

 実験装置は大別して、動力計、小型ガスタービン本体、熱交換機および計測装置一式から成っている。動力計軸端には、回転数を測定するための発信器および受信機が取り付けてあり、アナログ式回転計により直読できるようになっている。減速装置はエンジンと一体に組み込まれており歯車を使用している。なお減速比は8.78:1である。回転数調節用ガバナーは、減速装置上部に位置し、30,000〜40,000rpmの間で調節ができる。
 熱交換機を使用し吸入空気温度を大気温度以下にするため冷媒をドライアイスで冷却し、熱交換機に循環させる。この方法により入口ノズルから入った空気を冷却させコンプレッサーに導いている。また、熱交換機の冷媒入口および出口に、冷却液温度測定用サーミスター温度計を設置し、吸入空気温度を知るために熱交換機内部にも同温度計を設置した。ここで使用した冷媒は水とエチレングリコール1:1の混合液で、−20℃まで温度を下げることができた。
 実験結果の測定は主として計器盤の計器指示を読み取って記録していたが、EGT(排気ガス温度)、圧縮出口圧力、タービン入口圧力の3項目については、特にその変化傾向を知る必要があったため、電磁石オシログラフを使用して連続記録した。EGTを測定する熱電対はクロメル−アルメルを使用し、タービン出口に取り付けた。また、圧縮機出口圧力、タービン入口圧力を測定する圧力ピックアップはストレンゲージ型のものを使用した。なお、電磁オシログラフの測定値と従来から使用している圧力計の指示との誤差は2〜7%だが、測定値としては信頼できるものである。
 水柱マノメーターを使用して、圧縮機圧力、タービン出口圧力、および入口ノズル差圧を測定している。
 燃料ビュレットは容量が500ccで、燃料コックの操作により、500ccの燃料を消費するのに要する時間をストップウォッチを用いて測定した。

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[4] By 以下、名無しが深夜にお送りします
02-13 21:18
理論

燃焼器

 燃焼器は、圧縮機により圧縮された空気に燃料を噴射し、燃焼を行い、高温高圧ガスをタービンに供給するものである。燃焼器の構造を考える場合、燃焼器内筒の穴のあけ方(位置、面積など)により、燃焼の安定、燃焼温度などが微妙に変化するため、理論的には燃焼器の解析は困難であり、実験や経験知識などにより燃焼器の構造や形状を考えなくてはならない。ガスタービンの燃焼器の構造として要求される主な条件を次に並べる。





1. 燃焼効率が高いこと。
2. 圧力損失が少ないこと。
3. 燃焼器出口温度の分布が一定であること。
4. 空燃比が広い範囲で高効率かつ安全に作動すること。
5. 内筒の耐久性があること。
6. 燃焼振動が少ないこと。
7. カーボンを析出しやすいこと。





*燃焼器の種類について*

 燃焼器の形状は缶形、環状缶形、環状形などがあり、内筒と外筒から構成されている。今回使ったIGT-60ガスタービンエンジンは缶形を使用しているので缶形についで説明する。缶形の燃焼器は1つのエンジンにおいて等間隔に円周上に配列したものや、小型ガスタービンのように1つしか使われていないものもある。缶形燃焼器には、エンジン本体より取り外しやすい、構造が簡単、燃焼が安定しているといった利点がある。

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[5] By 以下、名無しが深夜にお送りします
02-13 21:19
実験方法

 軸出力の評価法に影響のあるFactor(EGT、FP、FL)についての検討を進め、あわせて吸入空気温度の変化による軸出力への影響を知るために、次のような実験を行う。
熱交換機を使用し、吸入空気温度を大気温度以下にするため、冷媒をドライアイスで冷却し、熱交換機に循環させる。この方法により、入口ノズルから入ってきた空気を冷却させコンプレッサーに導く。熱交換器の冷媒入口および出口に冷却液温度測定用サーミスターを取り付け、吸気温度を一定に保つため、常に計測を続けた。実験手順は次のようなものである。

1. 回転速度調節用ガバナーにより、エンジン回転速度を34,000rpmより2,000rpmおきに40,000rpmまでセットする。
2. 動力計負荷調整ハンドルにより荷重を2kgおきに4〜16kgまで変化させる。
3. 回転速度および荷重をセットした後、次の各項目についての計測を行った。




エンジン回転数
動力計回転数
圧縮機入口圧力
圧縮機出口圧力
圧縮機扇車出口圧力
タービン出口圧力
入口ノズル差圧
タービンノズル入口圧力
タービンノズル出口圧力
潤滑油圧力
燃圧
排気ガス温度
タービンノズル入口温度
圧縮機出口温度

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[6] By 以下、名無しが深夜にお送りします
02-13 21:20
実験結果と考察

軸出力と排気ガス温度(EGT)

 ガスタービン機関の軸出力を知る方法について、実験を重ねた。
 機関の排気ガス温度(EGT)、回転速度、各部圧力を細かく測定した結果、軸出力との間には何かしらの関係があることが予見された。そこで、EGTの測定によって軸出力を知ることができるかどうか実験をしてみた。
 まず、任意大気下の運転における実験データを整理し、縦軸に軸出力、横軸にEGTを取り、各回転数における結果をプロットし、図表にした。これによれば軸出力とEGTとの間および回転数との間に比例関係があることが分かった。それならば、運転中において動力計を使用しなくてもEGTによっておおよその値が知れるのではないか。
そこで、測定データに標準大気への大気修正、ならびに温度修正を行い、回転数ごとにプロットし、34,000〜40,000rpmまでを2,000rpmごとに作成してみた。その結果、各値の誤差は、軸出力において約5%くらいだったので、実用上差し支えないと思われる。従って、このグラフによって軸出力の測定が従来よりも容易にできると思われる。尚、EGTを同一としてみると、エンジン回転数の増加に伴い、軸出力も増加していることが分かった。また、軸出力を一定としてグラフを見てみると、回転数が高いほどEGTが低くなっている。同じ軸出力を出すのに、低い回転数の方が、空気過剰率が小さいためである。ドライアイスを使用して吸気温度を低下させたときの軸出力についても同じことがいえる。
次に任意大気下の運転と、ドライアイスを使用して吸入空気温度を低下させたときの軸出力を考える。吸入空気温度が任意大気下の時の15℃に比べ、ドライアイスで温度を下げると10℃程度下がり、約5℃になる。同じ回転数で同一の軸出力下におけるEGTの違いを見てみると、吸入空気温度の差が10℃なのに、EGTの差は約30℃となっている。このことから、回転数が同じならば、吸入空気温度の低い方が軸出力が高くなる。
始動時間とEGTとの関係
 
まず12Vのバッテリーを接続後、スターターモーターを始動させ、5,000rpmまで回転させたのち着火レバーを上げ、燃料を燃焼室内に噴射し、1〜2秒後に着火する。EGTは着火後上昇するが、任意大気下のときと、ドライアイスを使用し吸入空気温度を低下させたときの運転とでは、急上昇する傾きとEGT maxに違いがある。これは吸入空気温度の違いによって生じているようだ。また、このスタート後の急上昇は、コンプレッサーの回転が低いときは空気過剰率が小さく、機関の冷却が不十分なためである。
任意大気下の運転時においては、着火からEGT max(680℃)までは5秒ほどで、急上昇する傾きが大きく、EGT maxに達した後すぐに100℃近く低下し、その後はなだらかに30,000rpmまで下がっていく。
ドライアイスを使用し吸入温度を低下させたときは、着火からEGT max(650℃)までは9秒ほどで、急上昇する傾きも若干滑らかになる。EGT maxの後は温度低下が遅く、その後30,000rpmまでは、早く低下する。
そのため、30,000rpmまでの到達時間も、吸入空気温度を低下させたほうが15秒ほど早くなる。これは吸入空気温度の低下により、空気の比重量が大きくなり、任意温度時よりも単位時間あたりの吸入空気量が増大するためである。EGTがEGT maxより低下していく理由としては、回転数が高まり機関冷却に十分な空気過剰率が得られたためである。

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[7] By 以下、名無しが深夜にお送りします
02-13 21:22
EGTの超過
 
実験中、スタートし点火後に、EGTが許容温度の700度を超過した。理由として、燃焼器内に付着するカーボンの影響が予想されたので、機内から取り除いた。採取したカーボンの量は1回目が5.8g、2回目が15.8gであった。また、ハングスタート によるものとも考えられる。その原因と現象を大別すると、次のようなことがいえる。

燃料供給量不足。
回転の上昇は頭打ちになり、スターター作動完了後は回転が下がる。排気温度の上昇は伴わない。

スターターシステムの不具合。
コンプレッサーを十分に回転させないと、燃焼室への空気量は不足する。その結果、回転の頭打ちに加え、排気温度の上昇を伴うこともある。

コンプレッサーの劣化、抽気弁の動作不良。
コンプレッサー背圧の上昇により、ストール状態となる。

以上のようなことから、着火レバーをONにする回転数5,000rpmから、エンジンが自動的に連続燃焼する回転数12,000rpmまでの間に、EGTが許容温度700℃を超過し、ストールの危険性が生じたため、スタートを中止した。

ちなみにハングスタートとは、タービンエンジン始動中、アイドルに達する前に回転が頭打ちに、あるいは逆に低下する現象。発生時には排気温度の上昇を伴うこともある。原因として、スターター関係の不具合や燃料供給の不足、コンプレッサーの劣化、排気バルブの動作不良などが考えられる。
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[8] By 以下、名無しが深夜にお送りします
02-13 21:23
あとがき

この1年の実験を通し、ガスタービンについて様々な研究をしてみた結果、従来から行われていた、動力計を使用せずに軸出力を知る方法について、より一層理解が深まった。ただ単に排気ガス温度や燃料流量と軸出力の関係ではなく、吸入空気温度を変えて両者の関係を調べてみた結果、吸入空気温度が変化すると、軸出力も変化することが分かった。また、熱効率についても燃料流量を含めた考察を進めた。熱効率に影響を及ぼす因子は、圧縮機効率、タービン効率、燃焼機内の圧力損失、温度比、圧力比などであり、これらについて実験と考察を進めてグラフ化した。それによれば、吸入空気温度の低下によって、圧縮機出口圧力は高まり、必然的に圧力比が大きくなり、熱効率は増加する。故に吸入空気温度と熱効率とは反比例しているということを理解した。
 なお、EPRと軸出力との間に何らかの関係があり、出力測定法として成り立つのではないかとの観点からも研究を進めた。しかしその関係は、圧力測定用ピックアップの取り付けに問題があったため、信頼できる値を得ることはできなかった。
 今後、これらの問題を考慮し、ガスタービン研究がさらに発展することを、切に望む。
 最後に、一年間を通し、大倉勝見教授および原動機の諸先生方のご指導、またSIHIの皆様にご協力いただき、感謝する次第である。

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