05/18 23:13

「望んでいなくとも」
ガラス玉

望んでいなくとも、堕ちていってしまう事がある。




パン屋で働いていた時に、ホームレスの話題になった。

その時の店長は、周りにはとても優しい人でしたが、でも自分には厳しい人でした。

その店長さんと、先輩のK崎さん、3人で話す機会が多く、その話題の1つでした。


私が、『政治家の人達が政治家専用に建てた、入居すらしていない、建物を、安い賃貸料で、ホームレスさん達に提供って、できないんですかね?』
と聞いたところ

店長は
『彼らは、国民としての義務を果たしてないのに、そこまでする必要あるの?』


……時が、止まった気がした。

ホームレスさん達だって、望んでそこまで堕ちた訳じゃないのに。


アメリカの財政大臣の女性は、アメリカのホームレス達を国民に戻すために専用のホテルを建て、そこに住まわせる代償に、始めはホテルの中で雇う形で、職を与えたそうです。
その職を足掛かりに職を見つけたり、住まいを新しく見つけたり。
希望すれば、ホテルの従業員として居続ける事も、できるそうです。


財政大臣さんは言っていました。
『彼らは、国民である事を放棄せざるを得なかったかもしれません。ですが、人間を辞めた訳ではないのです。』

少し手を差し延べるだけで、いくらでもやり直せるんです。
と。


社会に、あるいは自分や周りになんらかの原因があって、居られなくなった。
容赦なく、切り捨てられた。


私は、店長の言葉に、頷けなかった。
だって、【明日は我が身】、【因果応報】。
うなづいたら、いつか自分に反りそうで。
いつか私も社会に容赦なく、切り捨てられる事を認めてしまいそうで

目に見える事なのに黙殺して、容認する事が、社会を形作る人の心の表層の、闇なんだと。
認める事が、
恐かった。
(だからといって、私になんとかする力も財力も、ないのだから、同じなんだけども…。)


店長、ホームレスさん達は、人間で。

いつか誰かが、かもなんだよ。

たまさか私や店長が、その立場に居ないだけなんだ。




切り捨てられた人達にとっての幸いの差は

なにがなんでも手を差し延べる、心の差なんだと、心が冷えた日でした。

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