エレベーター・ミュージック





 上に参ります、と彼女は言って中におれを招き入れた。ん〜んん〜ん〜。二人きりの密室にエレベーター・ガールの鼻歌が響く。足の裏から振動が伝わり、エレベーターが動き出したのが分かる。ん〜ん〜。彼女はおれに背を向けて、青い帽子、青いジャケット、青いスカートを揺らせながら自分の鼻歌に乗っている。白い手袋がリズムをとって安産型の尻を叩いている。おれの足の裏は振動を感じているので、このエレベーターはまだ動いている。何階にいくのだろう。何階ですか?とおれは質問されていない。階数表示は青い服にはばまれて見えない。んんん〜ん〜。セミロングの黒髪が背中から胸から暴れまわっている。ヘッドバンギングをするエレベーター・ガール・ミュージック。踊ろうぜ、ディスコティック!頭を振りすぎて帽子を落とした彼女は上着を脱ぎシャツのボタンをはずしながら器用にスカートからストッキングを引き抜くと帽子を目深にかぶったせいで見えなかった瞳を上目遣いでおれの足の裏を揺らしている。ん〜ん〜んん〜。彼女の鼻歌が聞こえるとあべこべにおれが彼女の足の裏を揺らしている。何回ですか?まだ一回もしていないじゃないか!手袋だけを身に着けたままおれに聞く彼女は帽子を拾ってかぶりなおし鼻歌。ん〜ん〜ん〜。足の裏が。彼女の下で振動を。踊ろうぜ。踊ろうぜ。踊ろうぜ。




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