神はどこへ行った




小学校のとき
あだなをつけられた
坂本はクロとわたしを呼び
坂本にとってわたしはクロだった
黒い外見の犬の名前は
つけられていなかった。

教室の机に何人かの男子が
半ズボンのまま座り
その後ろにはママたちがたっていた
男子の膝小僧は擦り傷で汚れ
ママたちのストッキングには伝線が走っていた
公開授業では先生が
「ゆいめーろん」の話を鼻息荒くしていた。

わたしはクロと呼ばれて
犬のように名前がなかったわたしは
そうして返事をすることを覚えた
そうすることで
わたしは膝小僧のむけた男子と
膝小僧のむけていない坂本と友達になった
坂本のママは電線の上を走っていた
下からのぞくと坂本のママの下着が見えた
黒い下着だった。

名前のない犬は黒犬のように見えたが
それは男子たちがいたずらで
授業で使う墨汁をぶっかけたものだった。

書道の時間
筆先は半紙を押し付けるのではなく
前の席のクラスメイトの背中にくっついている
一番前の席のクラスメイトは誰にもくっつけられず
一番後ろの席のクラスメイトは坂本のママが黒く塗っていった
そのときばかりは電線が降りてきたものだった。

坂本はわたしをクロと呼び
わたしは坂本をサカホンと読んだりサカボンと読んだり
半紙に書かれた文字を誤読した。

いつのまにか男子たちは卒業して
ずるむけていたり
名前のない犬から名前のない女の子にぶっかけたりしていた
坂本のママは電線上のアリア。

机のまわりには誰もいない
誰もわたしを呼んでくれない
ここには誰も
いない

いない


ばあ









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