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新着メールは作業中に来た。きょうは先週の木曜日に出された課題をこなさなければならない日だった。無論、作業はやっつけ仕事だったが、リバーハウスは飼い犬の手に噛みついたところだった。96回目の朝を迎え、彼女はご機嫌に尻尾を振っていた。レンジで温められた鶏肉をむさぼり、リバーハウスの作業を邪魔していた。そんな最中にメールは届いた。「限りない明日への展望を私たちと一緒に追い求めませんか?」送り主はスパゲティ財団と名乗っていた。聞いたことないな、とリバーハウスはスパゲティ財団をググった。彼女は鶏肉をむさぼっていた。先週の木曜日は先々週から見た来週の木曜であった。「わたしたちの未来はすでにして過去であった」ググったページはとてもうさんくさく、リバーハウスはやっつけ仕事に精を出していた。木曜日の課題を終わらせるために、レンジに鶏肉を放り込み、キーボード上で彼女が尻尾を振っていた。わんわん。「快適な再来年を目指してあなたは如何に生き抜くことができるでしょうか?」96回目の朝に鶏肉を、リバーハウスは温めていた。こんにちは。再来年には課題も終わっているだろう。きっと、彼女は再来年の今日も尻尾を振りながらリバーハウスの仕事を邪魔している。脂の溶けた鶏肉に、歯垢のついた牙をつきたてているのであろう(そうだろうか?)。スパゲティ財団のウェブサイトには美味しい鶏肉の調理法が載っていない。それはリバーハウスにとってとても残念なことではあったが、相変わらず彼女は尻尾を振っており、やっつけられた課題は手つかずのままレンジの中に放り込まれていた。チン。木曜日にしか鳴らない。鳴かない飼い犬に手を噛まれる。リバーハウスの手に鳥肌が立つ。いつの間にか温められている彼の右手は96個目の歯形をつけられたところだった。明日は木曜日だった。もう何年も前からそう決まっていた。




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