風の夜に




突然の帰還だった。

−−いやあ、凄い風だったよ。田舎の鉄道みたいにがたこと揺れるの。

着陸。

−−エア・ポケット?だっけ?ふーん、って馬鹿にしてたらひゅーんって心臓が。

旅行鞄には大量の思い出が、

(そいつらは「思い出」として買わ/売られている)

−−心臓が口から飛び出そうだったよw

琉球の肖像画は遠近法を用いていない。不自然なサイズ比。それが権威だ。

(「思い出」として現在を生きる。土地々々で焼かれる守り神が過去の存在であるがゆえに商品価値が生まれる。シーサー。阿吽の呼吸が雄雌のペアであったことを知らないものは多い。)

−−台風は大変だ。傘を持ち歩いている奴は素人だね。そうそう、わたしのことなんだけどさ。カッパなのね、現地の人はみんな。そう、傘だと折れちゃうの。どこのコンビニでもカッパが売り切れでさ。ようやく夜半に見つけたら、翌朝雨が上がるのね。ふーん。

大きさが権威を比例関係に乗せる。その逆ではない。広大な宮殿を持つことで初めて権威が生じるのだ。権威が広大な宮殿を持たせしむわけではない。そびえたつ祈念の塔。反比例する穴。穴。穴。

(左が雄であり阿の位置である、つまり向かって右側であり、現在の京都の雛人形をイメージすればよろし。東京ならびに関東圏の向かって左側のお内裏様は敗戦後の西洋の文化の流入の影響であった。権威の転換。それらは形式的なものであり、それゆえ波及する変容の手は協力的である。逆ではない。)

−−青い空、青い海、なんてどこにもなくて透明なビニル傘越しに見た砂嵐のような海の色とマスカラが流れ落ちたような涙でさ、はっ、ジンベイザメの額にひっくり返って張り付いたコバンザメの腹が膨らんでいてさ、出産の手間はさすがに自前なんだなぁって。まぁそれも分厚いガラス越しなんだけどね。

爆発。

(北極星が権威の証だった。それを背負うことで権威を担保できた。月は東に日は西に。逆もまた真なり。南前すれば左より日の手が。協力的に権威を担保する。太陽はいつの時代も明るかった。左側が明るかったために男性は権威を求めて左側に立った。太陽神ラー。彼は「彼」であった。ゼウスもまた。一神教の光も太陽をイメージさせるであろう。アマテラスに嫉妬するスサノヲを幻視する。それゆえ彼は「彼」であることを持って落ちていく。穴に。)

−−飛行機は田舎の電車みたいにがたごと揺れていた。無事に離陸アーンド着陸。地面に着いて潰れるのは雨粒ばかり。

すさまじい光で瞑れる眼、陥没する大地。まるで太陽が落ちてきたみたいに穴がほげる。ポケット?炸裂する爆風に心臓が口から飛び出し、あたり一面が真っ赤になる。

(風が吹いた。落ちていく穴から上空に吹いていくのか、落ちていく私/彼方が勝手に感じている向かい風なのだろうか。光はなかった。ただただ真っ暗だ。)





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