[九月にたなびく]
交通渋滞が苦手で歩くことばかりに神経質な男は
道端においてある煙草の吸殻を拾っては
また置き戻すということを延々と繰り返している
煙草はいつしか裸の女になり
男の股間には注射器がぶら下がっていた
女は看護婦だと男に告げると二人は地面に並んで体育すわりをして
今日もまた一日が終わるんだね
と目の前の車のエンジンがつぶやくのに耳を澄ませた
ルービックキューブの全ての面を黒いマジックで一身に塗りつぶし
女の白衣は男の精子で汚されてしまった
これ以上焼けないものはないかのように空はいつまでも夕焼けで
二人のほかにはエンジンの呟きしか世界には存在しないのだった
男の手のひらの上で転がっている夜に
裸の女は肌を重ねる
どの面も同じように柔らかい月が二人を照らすから
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