08/02 11:45
｢僕の部屋｣
春
誰でも他人に入ってきて欲しくないところってありますよね。
それは実際の場所であったり自分の心であったり。例えば前者は自分の部屋とか、思い出の場所とか……後者は誰にも言えない想いとか、忘れたかった過去とか。
私にも勿論そんなものがあります。というか、人間誰しもそんな想いがあることは間違いないはずです。
今日私がしたかったのは恋のお話です。
元彼と初めてキスした河原、言えず終いだった中学生の頃の幼い恋心。錆色に濡れたテトラポットに、ゆっくりと伸びる君の影。
散らばる想いはあらゆるところにあります。普段私が何気なく通り過ぎている風景に、それだけの記憶が詰まっていたら。あなたは、どう思いますか？
私は、嬉しいです。
誰かの記憶の中を、全く関係のない私がまた泳ぐ。波音を立てないように、慎重に、真っ直ぐに私は泳ぎます。
それが「そのひと」の踏み入れて欲しくない場所かも知れないから。
でも、私は時に激しく泳ぎます。誰かの記憶じゃないかも知れない、ここは私の記憶かも知れない。そんな想いを込めて今日も私は泳ぐのです。
小瓶に、口には出せない想いとほんの少しの期待を詰めて流すように。
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