投稿日03/15 00:36

「マダム」
ジェルガヒミカ

今日、(もう昨日か)私の住む街は久しぶりの好天に恵まれました。私は仕事も一段落したので小銭入れだけ持ってわざとケータイは置いて近所を散歩していた。私の住むマンションの近くは飲み屋街が近いので昼間からブラブラしている人間も私と同じ様にちょっと纏っている空気が違うというのか誰もが近寄りがたいものがあったりする。そんな癖のある人間達の間を行き来している猫が全国の飲み屋街には何匹いるのだろう。私の街にも例外なく何匹と言わず何十匹といるのだがそんな野良の一匹いや、一人に近所でマダムと呼ばれている白くてデップリと太った猫がいる。近くのおばさんが切り盛りしているスーパーで猫の事を聞いてみると7、8年前ぐらいから住み着き始めて当時は何匹かの兄弟と行動してるのをよく見ていたのだが、いつのまにか一匹で行動するようになったらしい。それと同じ時期ぐらいに彼女は止まってるタクシーを見ると必ずタイヤや車体で爪研ぎをするらしい。運転手が怒鳴りに近寄ろうとすると彼女はその運転手に尻尾を立てて威嚇し、突っ掛かっていったりもするらしい。おばさんがいうには彼女の兄弟が車に轢かれたかしたんじゃないかしら。という。でもおかげで一般車の路駐も少なくなったらしい。
言われてみればこの辺りというか、この通りだけ妙に違法駐車が少ない。そういう訳だったか。それでこの辺りの人は彼女に敬意と愛情を込めて外見からマダムという愛称で呼んでいるのだと。
私も前に何度かマダムと遭った事がある。彼女は私の前を悠々と歩き車の行き交う道路だけは外見からは想像も出来ない忍者の様にピョンピョンと跳ねる様に渡ってそして又スタスタと街を徘徊曰くパトロールしていた。

そして今日も喫茶店に入ろうとして喫茶店の扉の前に立ってドアを引いた時扉が何かに引っ掛かった。?と思い、足元を見るとマダムが扉の前で気持ちよさそうに昼寝をしていた。確かに此処は日当たりがいいかもしれないがこんな人の目につくしかもこんな場所に。店主は何とも思わないのかなと思い視線を店内に向けるとそこの店のマスターが近寄って来ては「猫に気をつけて入って来て。」一瞬、はっ?と聞き間違えたかな?と思ったが、別段マスターは猫のマダムを叱ったり追い払ったりはしない。笑いながら「いつもの事だよ」みたいにマダムと私を見て店内に戻っていった。この辺りではマダムの存在は客である人間を凌駕する場合もあるのか。と一笑し、私も改めてマダムに敬意をはらいマダムに扉が当たらないように
そーっと開けて店内に入ってその日は夕方までのんびりと過ごした。軽い買い物をしてマンションへと帰る道でパトロールしているマダムに遭った。彼女は飼い猫が部屋をうろつくみたいに又は酔っ払いが街を徘徊するかのようにも見えた。
マンションに帰ると部屋に敷き詰められるかのように散乱したファックス用紙と無数の着信履歴が私を熱烈的に歓迎してくれていた。ファックス用紙は内容が見えないようにソッポ向いて適当に集めて裏返しにして机に置いて、ケータイは…とりあえず電源を切って冷蔵庫に買って来たビールを入れて食事の準備にかかった。
青椒肉絲を作りながら、ふとT君が言ってた言葉を思い出した。「先月のバレンタインは今年は逆チョコなのよ。って言ってたから渡したのにホワイトデーになったら今度はそんな事は一つも言いやしない、僕は又上げなきゃいけないんですかね」
いいじゃないか、もう一回プレゼント渡すぐらいそれで女は気分が良くなるのだったりもするのだから、そうしてあげるのも男の甲斐性。或る意味安い買い物なんだけどなぁ。
と思い、もしかしたら着信履歴にT君の着信履歴がありかもと思い電源を入れようかと思って…やっぱり止めた。
私は気持ち良く青椒肉絲を食べながらビールを飲みたいし、その後ゆっくり風呂に入って本を読みたいのだ。明日にまわせるであろう面倒な事は明日やろう。そして面倒を引き受けた後にT君に電話して今日の結果を聞いて気分良く仕事に取り掛かろう。風呂に入る前にベランダで食後の一服をしていたら、猫の鳴き声が風に乗って聞こえた。マダムかな?と思って心の中で「お疲れ様です」と呟いた。空には月が輝いていた。明日も天気は良さそうだ。

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