投稿日04/19 17:32

「ハンバーグレストラン」
ひよこ

思わずその店に通いつめてしまう1人のおじさんがいる。

ちょっと小汚い、売れてない感じの店で、当然味も良くも悪くない。
店に入った瞬間に、
「あれ、お客は僕だけかい…」
って思うような店だ。

店には1人で来る客が多い。
にぎわっている店より1人の時はこういう店がいいんだ。
1人で牛丼屋に入る感覚の、ワンランク上って言ったらいいのかな。
まぁ何が基準でもこの店に『ワンランク上』っていう言葉は似合わないのだけど。

しかしこの店にはなんとなく行ってみようかなって思う。

この店にいる1人のアルバイトの女の子、それ子が最大のチャームポイントなのだ。

おじさんがメニューを開くと、誤魔化しもなく、
「ハンバーグ(オーストラリア産)」
「チキンステーキ(メキシコ産)」
(国産)の文字はない。

「お客様、お煙草は吸われますか?」
「あ、うん」
「じゃあ、すぐ灰皿お持ちします!」
ここには喫煙席も禁煙席もない。

おじさんはサラダ(S)とハンバーグプレート、それにビールを注文する。
「ライス大盛りね!」

1分でサラダは来る。
「ビールとシーザーサラダになります!」
「Sサイズでこのサイズかい?すごいねー!」
「ありがとうございます!」

サラダをつついているうちにすぐに肉が来る。
客はおじさんだけだから早いのだ。
「ハンバーグプレートとライス大盛りになります!」
「…大盛りってこんなに多いのかい??」
「ハイ!!!w」
「こりゃマンガみたいだねぇー食べきれるかなぁ…」
「がんばってください!wでもムリしないでくださいね!」

量はすごいけどお世辞にも美味しいとは言えない。
心の中で、「まぁこんなもんだ…」と思ってしまう。

でもその子はよくできた子なんだ。

こんな店にはもったいないんじゃないかな?
接客態度もいいしすごく気がきくし、そしてなかなかの美人なんだ、

もうちょっとこ綺麗な(そこそこの)カフェやレストランで働けばいいんじゃないかな。(余計なお世話なんだけども)

実際(そこそこの)レストランに行ってみると、まったくがっかりさせられるヤツが多くてね、
接客するのに慣れきっているのか、クールに対応すると決めつけているのか、
本当に擦れたヤツばっかりだ。

その子は特別な事があるわけじゃないんだけど、
笑顔でハキハキしてて実に気持ちがいい。

中年の男が、ハンバーグを毎週そう何度も食べたいなんて思わない。
でも売れないこの店の、ちょっとした手助けをしたい気になる。
おじさん1人ごときの客足が増えたからって変わりはしないのかもしれないけど、
そしてバイトの子には売り上げなんて関係ないんだろうけど。

とにかくおじさんの事情としても、多少味は妥協しても、周りの喧騒を気にせずにゆっくりとご飯が食べれるこの店はちょうどいい。(これでもかってくらいに満腹になるまで)
そしてバイトのその子も接客するのはおじさん1人に専念できるから実に気が利いて、おじさんはえらい歓迎されているような気分になる。


そのおじさんを見ていて気付いたんだよ、
僕もそのハンバーグレストランに毎週通いつめる数少ないおじさんなんだ。

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