投稿日05/30 11:09
「WELCOME BACK」
ひよこ
なんでも見えないように袋に入れてください。
そんな街ばかりなんだ、ここはね。
こんな晴れた日には、フランス人みたいに、紙袋から飛び出したフランスパンを脇に抱えてランラン歩きたい、そんな気分。
「フランス人みたいにフランスパンを」なんて「日本人みたいに和服を」みたいなものかな。でもいい。それでもいいからフランス人みたいにフランスパンを持って颯爽と街を歩きたいんだ。
そしてボンジュールなんてパン屋のおじさんに言うんだ、笑っちゃうかもしれないけど、もっとこんにちはを言いたい時だってある。
それはともかく、ここではなんでも見えないように袋に入れるんだ。
パンだって本だってなんだって。
そりゃあ『就職しないで生きるには』って本を小脇に抱えて歩いてたら恥ずかしいさ。(でもこの本はなかなかおもしろい本ではある。)だからって「今週のベストセラー」を小脇に抱えて歩くのも恥ずかしい。「不朽の名作」だって時には恥ずかしい。
自分ってやつはなんて恥ずかしがりなんだ、それともself-confidenceが異常に弱いかどっちかだ。
とにかく気にしすぎなんだよ、最近の自分だってそうだ、
それが当たり前なこの街だから、そんな事気付きもしないわけなんだけど、みんな。
だからなんでも見えないようにするんだな、
空気にさえ遠慮してやがるんだから。
そんな事を考えているうちに、バッグもなにも持たずに出かけたい気分になってきたんだ、ちょっと大きめのポケットがあればそれで充分。
笑っちゃうけど、名作劇場みたいに、使い込んだジャケットのポケットにリンゴなんかをそのまま入れて、公園のベンチなんかに座ってそれをそのまままるごとかじりたいんだな、
それがリンゴがスーパーのビニール袋に入ってるのを持ってるのを想像してみたら、それこそ侘しい気分になっちまう。
お高い店の袋を引っさげて歩くのが嫌いってわけじゃない。そっからでっかいスツールの脚かなんかが飛び出してたりなんかして、でっかいプレゼントのリボンなんかが飛び出してたりして。
今日買ったものは今日持って帰りたい。
こじんまりしたものをちっちゃな袋に入れるために買い物してるんじゃないんだ、そんなものは引っさげて歩きたくないんだよ。
こじんまりしたプレゼントなんかはポケットにしまっておきたいんだよね、あげるときももちろんそっから出してやるんだよ、プレゼントなんか用意してたの?って、そん時の相手の顔が見たいから。地味なサプライズはなかなかいいもんだね。それが、ダイヤの指輪だって、ただのキャンディーだってもだよ、
だからくたくたになったでかいポケットのジャケットでも着るんだ。
自分が生きててしたいことっていうのはさ、つまりはそういうことなのさ、なんか大げさだけどね、
気付かないけど、ここは、そんなことをするには不憫すぎる街なんだ。
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