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[1] 幸福論、夏眠編
By 紅魚
06-28 21:09
もう僕ら奔放が良いよ、
ってあの時呟いてしまったのだっけ。
こんな風のない夜は
魚がとても良く飛びます。
長い冠はためかせて、
リュウグウノツカイが誰かを迎えにくる。

夢遊病の午下がりに茂るすかんぽの大きな葉がさわさわと噛み付くんだ。
痛い痛い痛いよ、
草いきれが、痛い。
絡めとられて養分になるンだろうか、僕。
そうだったなら何て幸せ。

緑色の記憶、
夏の記憶、
これから始まる夏、の、記憶。

ビィ玉を並べて弾いて、
水中花を無闇矢鱈に点滅させるコポコポ。
貝殻を耳に押し当てて鼻に皺、何も聞こえないよ嘘つき!
ゆるゆると被さる夜にはありったけのしかけ花火に火をつけて、
それを尻目に二人、線香花火を片付けよう。
ジジと鳴った玉、
落ちずにしぼんで消えた。
夏の、弔い。
さいなら。

執着みたいに絡む蛇の抜け殻を引いて千切ってばら蒔いて、
これをもちましてめでたくもナツノオワリでございます。
だって空っぽは嫌い。

こんな風のない夜は
ウサギが電波を飛ばしたりします。
市松模様に散らばった紅い眼がくるくるして、
僕は君を忘れちゃう。

時計の針が蕩けるように境界線の曖昧な耳許に
なすりつけるみたいに置いて来た肉声の雫が粘り気を持ち始めて、
君は鬱陶しそうにする。
僕は声をもう一度舌の端に乗せて、
心配することは何もないよと笑って見せる。

緑色の記憶、
夏の記憶、
これから始まる筈だった夏の、記憶、
睡蓮の匂いのするそれを抱き締めて僕は更沙の眠りに就く。
甘露、甘露。

独り溺れる熱帯夜に紛れ込む夢を僕は愛する。


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[2] By 紅魚
07-31 02:38
総て、夏のまま、
お終いにしたかった。

という過去のお話。

二人、
というのは以前も、今も、
切実な願いです。


V803T
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