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[1] 王国
By 紅魚
06-30 23:09
かりんか、こりんか、
と鳴りながら転がる
光、光、光。
ティコの海から静かの海まで、
少年等は手を繋いで泳いでゆきます。
宙空をゆく月魚のしたたるような赤色の尾鰭は、
鉱石性の元素を含有しているらしく、
触れると指先が微かにぴりとして、光った先からろろ、ろろ、と発音するので
くっくっと笑い合いながら
少年等は何處までもゆくのです。

何しろ其處には
孔雀石の御殿やら
蛋白石の玉砂利やら
踏めばはらはらと剥離して舞う
白雲母の敷石やら
あらゆる色の水晶柱をモザイクに仕立てた外壁やら、
その他ありとあらゆる絢爛が揃っていましたから、
おまけに
噴水からは肉桂水の緑をしたのが
後から後から流れてペリドットの水盤を満たしていましたから、
少年等には
其處は
まるで極楽のように思われるのでした。

手を伸ばして掴める物のそんなに多くないことを
彼等は知っていましたから、
ゆくりゆくりと
漂うように少年等はゆくのです。
シで終わる歌を細く唄いながら
エメラルドの幸福を舌先で蕩かす
その糊粉をはいたような鼻梁と
転がるような眼差しは、
光を正面から見据える
欠片も疚しさのない月そのもの。

マァレ、マァレ、マァレ――。

少年等の無限の四肢は
永遠を疑うことなく何處までも伸びてゆきます。
繋いだ掌の境界は輝きでうやむやに なって、
顔見合わせた少年らは、
矢っ張りくっくっと笑い声をたてるのです。
それは丁度、
ぐるぐると嗅ぎ合う猫のよう。

泳ぎ疲れた少年等は
静かの海の真ん中で
深く深く、
潜水するような眠りに就きます。
彼等の何處までも伸びやかな腕(カイナ)と、
上気した頬や項に張り付いたにこ毛が内包する
如何しようもなく密度の高い乳白色は、
光。
もしも絶対的な希望というものがあるならば、
りんからんと鳴る其れが、
屹度、そうです。

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[2] By 紅魚
07-31 02:41
気の向くままに。

手を伸ばして掴めるものは、

そんなに多くない、
のです。
V803T
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