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[1] 七月、猫連れ。
By 紅魚
06-24 13:45
そこは悲しみが悲しみのまま降る場所だったので、
あたしはあたしでしかなかったので、
猫を連れてきたのは正解でした。

ぬるすぎる水の底
金魚たちは丸くなって溜息を吐いています。
落としたヨーヨーが割れてしまって
小さな子供が、死んじゃった、と泣いている。
路面に張り付いた極彩色の残骸は
まるで、
轢かれた蛙の腑のようです。
わざと踏み散らして歩いてやった。

右手に齧りかけの林檎飴握り締めて、
あたしもぽとりと泣いてみる。
夢の世界のいきものみたいに
あたし、
優しくなりたかった。

ねぇ、猫、
双子の星ごっこをしよう。
あんたがチュンセ童子、
あたし、は、ポウセ童子。
星の千年があたしを駄目にする前にあたしは是非とも泣き尽くさなくちゃならない。

だからさ、つまり、
あたしには純粋がとてもとても必要だって、
そういうこと。
それだけ。

赤い鳥居はくぐりたくありません、
かざぐるまがカラカラ舞うから不可ません。
鬼さんこちらと狐が笑う、
翳した尻尾の先に赫の華一つ。
触れちゃあ不可ないよ、
指が爛れっちまう。
だってあんたの夢だもの、
とてもとても重いンだよ。
こんこん!

そこは悲しみが悲しみのまま降る場所だったので、
あたしでしかないあたしは酷く頼りなかったので、
猫を連れて来たのは正解でした。

さぁ、
星が出た。
あれがチュンセ童子
ポウセ童子はあっち。
遠くのお囃子は星渡りの銀の笛。

微かな祭りの喧騒が、
耳雨になって降り注ぐ。
ねぇ、猫。
きちゃったね。
こんな所まできちゃったね。
どうしてあんたのまなざしは
そんなに真っ直ぐなんだろう。

林檎飴はもうありません。
優しくなれる筈だったけれど、
林檎飴はもう、ありません。
隣のあの子ももういません。

こんちきちん。
こんちきちん。
全て七月の出来事です。


Mail
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[2] By 紅魚
07-31 02:02
七月、
に意味はありません。
夏でなければ笑えない気がしたから。

想いを閉じ込めた、
読み返すのが苦しい作品。

それでも、
代表作はと訊かれたら、
この作品をあげてしまうと思います。

V803T
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[3] By XXXXXXXXX
08-19 20:52
こんばんわ。


優しくなりたかった。

これがこの詩の全てではないでしょうか。
夢の世界の住人のように、真っ直ぐな瞳をした猫のように、ボンボンが割れて泣いてしまう子供のように、純粋な優しさが、欲しかった。
そうなれなかった悲しみが、苦しみが、苛立ちが、裏返しになって意地悪な行為になる。どれだけ取り繕うことはできても、それが「あたし」でしかない、つまりペルソナを剥がした生の「あたし」。
聖域の狐は何でしょうか。愛したかった存在でしょうか。赤い鳥居という結界で区切られた聖域にいる狐。そこは無垢過ぎて、入りたくない場所なのでしょうか。自分を裏返したような存在、それが狐?
ここのところは正直よくわかりませんでした。しかし感じた雰囲気のままでよいのでしょう。



飾らず、生のままの自分をさらけだした、それだけに胸に迫る詩ですね。お祭りから、隣の子供から、狐から離れてきてしまうその気持ちは、孤独というモノを知るヒトなら誰しも持つ感情でしょう。猫を連れてきて、よかったですね。僕も猫の瞳を知っているので本当にそう思いました◎
W42H
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