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[1] 少女は卵を抱く 2007(cleo/isana)
By 紅魚
02-09 15:16

夜空を霞ませた、浮遊の白色を、
ふわり、と、させた、密度のような。
涙を呑むように、空は、海。
と、見上げている少年。
漂いの風はどこか涼やかで、
それでいて甘い香りがほのかにスミレ色。
眺められている海卵には、優しさほどの羊雲が見え、
抜けるようなその蒼穹を、包みあう海。
ゆらぎの髪に重ね合わせてしまいます。
向かう先には、そのままのすべてを、
少年の生命で包んでしまいたくなるのです。

そんな大切を、知っていたのかもしれない。

浅瀬から寄り添う浜辺では、大地を撫でる波、触れた、ということ。
(孵化。)
その次も、これからも、そして、
凛と芯の通った、それでいて柔らかい声。
離れてしまう、前に。また、止まない呼び声は耳許でささやくようで。
(海鳴り。)
このままでいて。
という祈りに似た、清らかな心地を裏返してしまう、やる瀬ない苦しさ。
(慟哭)

フワリ、と、膝を抱える手に触れた温度は、包み込まれていた、記憶は幼くて。
(君が、そう君が――)
見わたせた、時、
飽和する蒼に満ちて、手櫛梳きあう間柄に、
さらり、編みこむお互いがあるなら。
それがきっと、本当に、触れた。
ということなの。
それがきっと真実なので。

一度寄せ合い、引き合う様に、頷く。
海のうねりのように、深く。
一度頷きなさい。
そこはまるで深層のプゥルでカリブ海の宇宙。
オゥシャンコォラルの眼差し。
で、見つめ合えたなら。
ただそれだけで柔らかいのに。

嗚、とも言ってはいけません。
只、見つめあいなさい、
泣きなさい、なんて。

涙が融ける密度は、
真理に一番近い真実を見つめて、は、いた。


胸許温めた涙が
少女の嘘を溶かしました。
哀しい、がわかるから、
小さな掌、舌先、涙掬いたくて、
つみあげた彼女の世界蹴飛ばして、
ゆりかごから身を投げる。
落下の金魚。
更紗の尾鰭、ゆらり。
海の底、見付けて手を繋ぐための、
ひとり歩き。お散歩。

海、みたいな、心。
抱かれて、内側から手を差しのべる、
守りたいって、あか、の、きもち。
蕩けるみたいにやさしい、世界。

(ふたり、まるで、おたんじょうびみたい)

ゆるゆると温かい懐に還りたくて、
二つの輪の燈に輪廻を重ねて、
なぞる指先、絡める。
安堵。
きっと、ずっと知っていた。

二人の寝床を揺らしたのは、
約束溶かした雨、と、
たどり着いた果ての涙。

ふたり、出会えた。
大切。触れたい。
ひと、つ。

(ねぇ、これはただしいかたち。
ほら、おつきさまだってふたつでひとつ。
まちがいなんて、
そんなのしらない。)

二人、ほんとう、に、触れたから。

星の巡りが、水宙の二人を見つめています。
生きること。
生きて死ぬまでの、
大切、のこと。
海鳴りが、
少女の中、
ゆっくりと、ゆっくりと、
種を芽吹かせてしまった。

(迷子だった少女には、
見つけてくれた少年は、
本物の神様のよう、だった、ので)

始まりは曖昧にも言葉よりも心が先。
夜明けは揺らめきのホログラム。
雨の匂いは水宙にとけて。
夜の向こう側からは波のない朝。
一つ、の鼓動のように。
溶けて、微笑んだまま。
還る。
震え、る。


(少年と少女は、ふたり、から、ひとつの、卵、孵るまで、大事に大事に抱えて、
同じ夢を見るって、そういう、決まり)

ふたりの秘密は、内面からみつめた、
海と大地を包み込む
やさしい卵の形をしている。


810SH
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