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[1] 空にかえる日。
By 紅魚
01-10 00:20

廻る空の高さが、
目を逸らさせてくれない。
身投げする気さえ起きない、
わすれなぐさ色のアクリル板の、苛々。

忘れながら生きるから、
忘れられるのが怖いのでしょうか。
ほら、ぐらぐらの空気の中、
銀のさかなが逃げ場無くして、
対流するのが見えますか。
魚。
てらてらと陽光に腐敗して、落下、しながら、
しまいには、
茜色の憂鬱を。

夏に灼かれたアスファルトの匂いを
懐かしいと思える人の影法師なら、
怖くないかも知れない、
と、思ってしまったのは、
きっと、
眠ったまま、夏が過ぎたからです。
いつしか蝉も絶えたのに、
あたしは、
じりじりと、じわじわ、と、
夢の聲引きずって、
泣くに、泣けない。

からっぽのひみつ
すきになんてなれないけれど
けとばしたりしないから
かえっておいで
たましい
ひかりのなかでゆれるみたいに
あるいていたかったんだよ
わらっているんだよ
みちって
どこまでもつづくみたいで
ほんとうはぐるりしてる
ばかみたいだ

ばか、みたいだ


くしゃりと踏み付けてしまった夏虫の死骸の
嘘みたいな軽さを悼んで、
空が泣いたなら、
走ってゆけたのに。
睨み付けたら、慌てて目を伏せる
熔けかけの太陽が、嫌い。
流れる時間の境界に、
指先を滑らせて、
おいのり、一つ。
どうか、あかとあをの溶けたこの色が、
いつまでも、褪せませんように。


優しい人。
失くしてきたものが疵ではないと呑み込むまでに、
いくつ夕暮れを数えましたか。
抜けた先なら、忘却の国がいい、
願ったことはないですか。

うつむかないと決めたけれど、
あたしたちに許されたことは
そう多くはなくて、
ゆるゆると途切れさせぬためだけに紡ぐ呼吸は、
どうしても、
徐々に熱帯びてしまうから、
道標の花焔は、今年も、また。
(とおくはなれてかくれんぼ。
 おにさんが、かわいそうね)

呼吸を塞いで/吸わなくてはいられないようにして/意地悪ではなくて/咳込めば涙が出るでしょう/生き方を教えてくれたひと/あなた/あなた/いいえ、きみ。

いきているんだよ。
どんなに弱々しかったとしても。
いきて、いるんだよ。
いかないでよ、と、手引くきみの、
夢の声音に連れられて、
のぼってゆく。
ひとつ、ふたつ。
夕に染まりながら、
魚、のぼって、ゆく。

仰ぐ空の先の先、
の、集中点の融解。
は、紅。

開放の音、が、きこえる。


820SH
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