01/24 17:41
「ごぼうサラダの彼。」
心羽
夕食のおかずに大根サラダを…と思い、とにかく大根を細く細く縦切りに切っていた。
何故だか、ふと小学生の時に給食で食べたごぼうサラダを思い出した。
マヨネーズと胡麻とお酢?で混ぜてあるサッパリとした美味しいサラダ。私は好きだ。
そしてまた何故だか、同級生の彼を思い出した。彼はごぼうサラダが大っ嫌いだった。
図体はデカくてスポーツ万能。勉強も出来るし顔もまぁイケメンだった。そんな彼がごぼうサラダを見るなりたちまち弱くなる。
彼は、学校に来て献立表を見るなり今日がごぼうサラダだとわかると、まるで地球が滅亡するかのようなオーラを身体中から教室に放ち、私達をそのオーラに巻き込もうとしたものだった。
給食の時間、彼は箸を固く持ったまま、ごぼうサラダを見つめる。あの、何とも言えない悲しい目は、何年たった今でも忘れられないものである。
ちなみに、通っていた小学校ではすべて食べないと、お昼休みまで残って完食しなくちゃいけない、というルールがあった。昼休み、きゃっきゃと騒ぐ友人を横目に教室のはじっこで、ごぼうサラダを食べれずに涙ぐむ彼を見るのが、私には何よりかわいそうで仕方なかった。
そんなある日、私は彼にこんな声をかけたのだ。
「ごぼうサラダ、食べてあげよっか?」
私の一声で、彼の背中には綺麗な天使の羽がバサッと見えた………気がした。
彼を天使にさせた私にも、嫌いな物はある。インゲンの胡麻和えだ。今では少しぐらい食べれるようになったが、私もまたインゲンの胡麻和えを見ると「今日で地球はインゲンに乗っ取られてしまうんだ」と思ったほどだった。
そんな時
「食べてやろうか?」
ごぼうサラダの彼が、今度は私を天使にさせたのだった。
それから彼とはクラスが同じな限り、ごぼうサラダとインゲンの胡麻和えの取り引きは、先生に気付かれないようコソコソと続いた。
彼のおかげで私はお昼休みまで残って涙目になりながらインゲンを食べずに小学校を卒業できたのだ。
成人して結婚した今でも、ごぼうサラダを見るなりごぼうサラダの彼を思い出して「ごぼうサラダ、食べれるようになったかな…」とお節介にも程がある事を思うのだ。
私はインゲンの胡麻和え、少しだけど食べれるようになったぞ。
ごぼうサラダの彼を思い出しのたは、大根サラダとごぼうサラダが似ていたから。
ただそれだけのことである。
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