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[1] シラナイ症候群/変な男
By 変な男
05-07 02:34

 黒黒とうねる綿の膜から、指が突き出て、撹拌する。するといかづちがゴロゴロ、放電し、全体に黄金色の血管を作った。
 男は顔をあげてそれを見ている。だが、見ている事を認識していない。放心し、目を垂らして、着ているレインコートは、真っ白だ。そう、白い雨が降っている。勿論雨が降っている事は分からない。男は雨を知らない。だから何も知らない。ジブンがなんであるのか、時分が分からない。知らない。




 「低気圧が日本列島を覆っています」気味の悪い指が先端に付いた棒で、列島全体に被さった白い曇をなぞりながら、いい歳をした中年の男が、天気の解説をしている。地味な茶色のスーツに、黒ぶちの眼鏡をしているその姿はまるで、太平洋戦争時代の偉い誰かさんのようである。
 それはそうと、この男は生意気にも明日を語っている。確かデータとやらに基づいてそれを予想しているらしいが、この男はデータの存在を、視聴者に教えなかった。神だ。神を気取っているのだ。だから余裕綽々と指の付いた棒で巨大列島をいじくり回しているのだ。皆男がイカサマやってるのを知らないので、男がデータに、翻弄されているの知らないので、
 男がデータが誰に作られたのかを知らないので、誰かが誰かに作られた事を知らないので、口をあけて万人がポカーンとしていた。それが空中から丸見えだった。




 蟻の巣状に広がる零度のコンクリート道路の上を、少し浮いた血管が赤々と脈を打っていた。そして一定の距離を置いて、その血管から弁を通して黒い液を放出し、その黒い液は林立するヒエラルキーの間を縫った。
 虚空には、羽音を立てた蚊の集団が真っ黒な龍のように纏まって飛び交い、それらは低空まで飛行すると、多方面に分散した。





 口から出した繊細な針は、神経に痛みを与えない毒液を送り込み、麻痺させる効果を発揮するが、一方、痒みを伴った症状が出ます。然しそれを蚊達は知らなかった。だから血を啜る事を知らなかった。
930SC
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