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[1] 煙草文明/S
By S
03-11 14:43

 煙草の煙が、今日も何処かで狼煙を上げ、誰もが僕達の吐き出す息に税金の価値はあるかと考えている。世界に香る悪臭が絡み、天使の輪や、様々な形状が浮遊している。最初の段階では都会の街並みを覆う程度の光化学スモックだったものがやがて、都会そのものの形を成して機能し、人々はいつしか街並みを勘違いしながら生きていた。悪臭の街並みを。然し元々は君達の金と体の一部だった。


 ガード下には女子高生の白煙と幼女のシルエットが座り込んでいる。薄ら笑いしたコンクリートの壁に描かれた言語表現、若者の主張そのもののような純粋な美しさが、彼女の中では確かに存在していて、僕らは皆足を止めた。彼女に表情は無い。だから皆それについて想像する事が出来たけど、彼女が煙の産物で無く、明確は顔であったなら、その自己満足な想像力は何の役にも立たなかっただろう。平成とはそんな時代だった。それさえいつかは時代劇になるとは思うが。いつかは。


 青空を悪臭で象られた煙の生物達が遊泳する。イルカは中央アルプスを海底の岩場のように身軽に乗り越えていくし、キリンは首を太陽に突き刺し、水を飲んでいる。例えば彼らには肉が無いが、肉があった場合に発生する現実の足枷が無い分マシだという捉え方も存在して良いであろう。神よ。それが人間のもつ芸術性というものだ。有形の否定こそが本能で、無形の称賛こそが真実なら、きっと皆住民票なんて要らないんだ。


 メンソール、セブンスター、ピース、或いは葉巻。僕らが吸引するものには僅かばかりの金額が発生し、吐き出したものにはまるで価値はない。然し君は言う。想像は形とは無縁のものであると。


 悪臭の煙で象られた顔の無い人々。都会の街並み。女子高生や幼女達。彼らを自己満足に想像したもの。それこそが文明と名を変えて、今も尚進行しているのだ。税金の高い悪臭と共に。
930SC
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