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[1] 紡ぎ／変態ピエロ
By 変態ピエロ
10-02 09:09
過ぎるという現象に抗う
鮭の遡上のような 誤魔化しの指が
時計の針を戻す(然しそれさえ経過の一つ)
イヤホン越しの 音階の艶やかさも
進行しなければ 一音のまま反復され
音であるまま 曲になれない
あの日やあの時の 匂いも景色も温もりも
煙のように 目にしみて
いつの間にか地球から
逃げていって
頭の中は 感触のない虚しさで
痛覚だけが 今をツツク
砂丘に舞う 琥珀色の砂の小波
灰色の雲間から注ぐ
飴細工のような斜光が
遠くの島を焼いて 昇る黒煙に手を伸ばす
花弁のように掌を開いて 閉じて
それでも掴めない もどかしさ
そのまま意識はボヤけ
暗闇に灯る 電灯が
首を垂れたままばちばちと鳴いて 点滅し
映写される 数ある 顔写真
そのどこかに あなたがいて 私がいて
誰もいない
戻らない 進まない とどまれない
そのうちに焦りが時間を追いつめて
今度は時間に追われている
そして いつのまにか焦りを追い
メビウスの輪のように 浪費していく
ひとときと その集積
窓越しに見える 国道沿いの田園と
案山子に止まる鴉の甲高い声
前を走る車のテールランプが
フラッシュのように目に焼き付いた矢先
車は強制的に停車する
どうやら信号待ちらしい
誰も渡らない横断歩道を
一人の老婆の影だけが渡り
わたり終えるとお辞儀をして
霧消していった
気づけば 前の車も 田園も無くなって
なにもかも 無くなって
再び何かを探して 走り回る
そんな喜劇を 誰も笑ってはくれない
そのうちに わたしさえ 居なくなる
本当に誰も居なくなる
それでも誰かが また 誰かを探して
その度に抗って 従って
紡がれる 景色
Android(SonySO-02F)
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