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[1] 正夢/PIERROT
By PIERROT
02-10 15:54


雲間から見やる 旭の 薄まる 光は
シャーレの死海に 培養された
けして孵ることのできない バクテリアの嚢胞を
鎖で繋がれた海底から 沸き立たせる

雫の垂れさがる洗濯竿 やわらかな 煌めき
妊娠図の 黒ずみが ベランダに 一抹 飛来して
濃淡な霧さめ 散らばる 林檎園の 規則的なざわめきは
一点の穢れと風の音と共に 瞳を穿っていった

言葉たちで覆われた 庭先の 意匠化された円卓
煙を吐くカップに溜まる 唾液 白い息が喉に詰まる
ガーデンチェアは 小麦色した 油絵の先にあって
小屋の扉は 半分だけ開かれている

コスモス アザレア カスミソウで埋まる 花壇には
人になれなかったものの 肋骨が
肥料となって ばら蒔かれては 散り乱れ
女王蜂が 六番目の骨を 貪り 託卵して 歩く

―ひととして 産まれたために ひとは 私は こうして

そして 火を放つ
水晶体の端から 端までを
徐々に 不知火と海底とが侵食して

絵画の中に溢れる すべてが 崩壊していく
そうして 灰を運ぶ 春風
飲み込まれ
固有名詞に変質し 分解されては飛び去る
家具や 花や 小屋や 街

名前など 無人の 安らぎの 中では 無意味な羅列だ
そうだとしても 都市の禿げた額 あの光沢は 眩しすぎて
私たちは 簡単に 焼却されて それぞれの庭で 火傷して
最後の 嚢胞に 転生されてゆく

海底の遺跡群 安らかな あぶく 庭先で 落ちた林檎の
知恵の 焼けた 実に詰まる 赤子の エフィラ
甘い 胎児の肉の 味が 舌と鼻腔との中で いま
満たされている

そう この地は 満たされている
薬中でもなく アル中でもない
合法的で 画期的な 依存症に
まとな ジャンキーたちの蠢く この情景に

言語の溢れる瓶から零れおちる かつての名前の 欠片たち は
小鹿のように足をくねくねさせて
螺旋状に結ばれていく 新たな 生命
それは そう
始まった 瞬間に はじめて 終わりを迎えてゆく







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