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[1] オフィーリアの再現/玲
By 玲
02-25 02:43


屋上の引き戸から 吸い込まれる
光に光を上塗りするような 粘りけのある輝き
階段の下からは 靴音の残響が木霊して
様々な音階で 鼓膜を突き刺し
現在の無音を 時間差で溶かしていく


神社の脇にある急な坂道を登ると
小さな祠と赤い鳥居があって
その先の森林が 手付かずの女の子のようだった
さらさらと抜け落ちる空気と 木漏れ日の散弾が
オフィーリアの小川へと僕らを導いて
流される事が出来なかった 女の子を静かに掬いあげる掌たち
僕らには性も欲も 恋も愛も必要なかった
ただ ここにある自然物のような
在り続けるためだけの 安らかささえあれば


小川のせせらぎはね
障害物が無ければ 無音になれるらしいよ
岩や砂利や 流木に水が不愉快になった音が
どうやらせせらぎらしい
つまりは 君の前に現れた 人や物事の連鎖も
君を煩わせた障害物だったわけだ
だけど君は 気付いたのだろう?
君自身も 障害物になってしまったことに


社会のせせらぎも 国々のせせらぎも
僕らのために うるさい雑音を発している
それでもその音は 僕らを殺しながら癒してくれる
出会い 別れ 労働 解雇
社会に放散された魂に鳴り響く
ちっぽけな湧き水から
小川がつくられ 人生となって海を目指す
みんながみんな オフィーリアの再現のように
死へと向かって 身投げしているのだと
僕らはダムの上から 落ちる人たちを見て思った


自分ってものが分からなくなる日に
自分が自分を意識できた
誰かが作り上げたものを自分だと
社会が求めたものが自分だと
信じてきた自主的な洗脳で
誰が 誰に 自分を教えるの?
誰が どうやって 自分になるの?


自分だと思っているものは
本当に自分ですか?
誰が作った自分ですか?
だったら自分なんていらねーよ


異常で正常な人々の多数決で
正常で異常な怪物たちを偏見してませんか?
自分を作っていく誰かを
作られてきた自分の 視点で見ているのなら
それは誰かの思惑のような気がしませんか?


君は誰かの川に流されまいと
流されそこねてしまった 哀れで正常で異常な
美しい売女だった
そんな君に僕は憧れていたんだよ


屋上の引き戸から 吸い込まれる
光に光を上塗りするような 粘りけのある輝き
屋上の上からは 靴音の残響が木霊して
様々な音階で 鼓膜を突き刺し
現在の無音を 時間差で溶かしていく


そう すべては時間差だ
僕らがオフィーリアのように
なることさえも


だからこそ 常に問われ続けるだろう


自分だと思っているものは
本当に自分ですか?
誰が作った自分ですか?
と。





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