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[1] ひかりの都市/PIERROT
By PIERROT
03-02 05:04

錆び付いた通勤電車が 高架橋からフレームアウトして
火の花が 幾重にも散らばった跡地に咲く
その花は じりじりじりじりと導火線を弾けさせ
あっという間に 爆発してしまい
街中が その閃光に照り出される
人影は ひかりを求めてそこへと群がり
爆破に吸い込まれ
ひかりがあがる度に 増えてゆく
切断された黒い肉片
やがてひかりが消え失せると
その瞬間を狙っていたのであろう透明な鬼が
それを喰らいにやってくる
辺り一面 咀嚼の音と黒い血液とで溢れ
赤い眼だけが 空間に取り残され
時間差で 暗闇と同化していく


溶けて垂れ下がった商店街のアーチが朝焼けする前に
蛍光するシャボン玉には蛍が宿り
シャッター街のあちらこちらに追突し
破裂したり 跳ね返されたりしている
生肉を練るような 生々しい音だけが
内耳を穿ち 私は
血に染まる白地のシャッターに
ひかりになれずにいたひかりを放つ


ひかりになるためには ひかりを潰さなければならない
あらゆる源にひかりがあり ヒトと呼ばれた私たちにも
ひかりはあった だけれど
マッチ棒のように頭に火を灯して
あらゆる許可を得るために列を作る
その燃え尽きるまでの間にこそ
私たちは残らなければならないと
躍起になって 燃やしあい
ばたばたと悲鳴をあげながら
あたたかなひかりになって
世界をあたためたのだった


あらゆるひかりが
あらゆるかげとなって
ひかりをもとめた
魂は蛍となって
ひとをなくしたまま
大自然と大都市とを
ひかりとなって
もとめた
なにもない場所にこそ
なにかがあったとしたのなら
なにかがある場所には
なにもなかったのかもしれない


赤い髪を腰まで垂らす 若い女が
白い瞳で見つめる 海岸線の弦を弾く
音素は 波紋を産み
波紋は風を運んだ
女は髪を揺らして 白い瞳は
ひかりの海となる
女が粉々に砕ける その狭間に
旋律は世界に降り積もる
世界は旋律に降り積もる
鍵盤のビルが崩れさるリズムが
蛍のひかりを乱反射させ
人影は群がりながら 焼かれてしまい
灰になって高速道路に降り積もる
痙攣する灰に眠りは訪れ
やがて去って
それを運ぶ通勤電車


だれがひかりなのか
なにがひかりなのか
女は白いワンピースを汚しながら
都市を綺麗にしていく
汚れなきゃ 汚されなきゃ
綺麗になんてなれないのかしら?
女は国々を歩いてゆく
ミサイルはひかりになる
条約はひかりになる
汚職はひかりになる
歴史はひかりになる
そのひかりはひかりになるために
鬼になった
鬼は赤い瞳を世界に描いて
残像は女のワンピースを
血で染める


ひかりは、明るくなんてなかったね
ひかりは、あたたかくなんてなかったね
ひかりは、ひかりは、ひかりは、
ひかりにはなれなかった
女は私の赤い瞳に口付ける
私の視界はぴんくから眩しいくらいの白になる
女の舌にくるまれながら
全てが許された気がした
それと同時に全てが追及された気がした


通勤電車には満員の、ひかり
あさひが昇る、ひかり
私の目の前には
見下ろす女の、
微かな影
私はその影をたどり
透明になった
そうして、



Android(SonySO-02F)
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