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[1] リビングデッド／PIERROT
By PIERROT
03-25 04:00
思い出せないものを沈めた瓶に
浸された海の名前を誰も知らないまま
明日は押し寄せては引いてゆく
弓なりの三日月に刺された波紋は
覗き見るまでもなく歪んでいて
結局のところ顔は頭から離れられない
ある日を境に
海図にはない新しい無人島で
漂う青白い霧が噂されてから
霊は否応にも居なくてはならなくなった
居なくてはならないけれども
いつだって消える自由もあった
居なくてはならなくなってから
居なくなりたくなる事を知った
もともと居なかったはずなのに
本当はここに来たかったのかもしれないのに
霊は霊になるために
そして、だれかはだれかになるために
どのような美しいものだって醜く貶めて
どのような醜い言い訳も誉め称えて
捨てる事に憑かれ続けているの
生暖かい月明かりが遠くのタンカーを照らしている
汽笛はいつだって承認欲求の塊に似て
一つの墓とヤシの木を羽ばたかせたがる
砂浜に難破した 母からの手紙が
誰にも拾われずに漂っている
この島に人さえ居ればきっと
届いたものもあっただろう可能性だけが
冷たい膜を張った心臓のバイパスに
絡み付いていて
それは一生私たちから離れることはないだろう
窓際から満月の音だけが
女たちの宮を目指して流れ込んでくる
私は
名前になれないその青白く光輝した
天の川のせせらぎを足で塞き止める
溢れ出すのは最後の惰性
零れ落ちるは最初の天使
私は瓶の名前を知らない
私は海の名前を知らない
そして生まれる事がなくなったであろうもの
その尊き名前をけっして知らない
無人島から眺める割れた海
霊と呼ばれた
名もなき者は今もまだ
ありもしない魂だけを探して
人になろうともがき続けている
Android(SonySO-02F)
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