08/31 09:16
「178 のど」
なずな
私は元来、喉が弱い。
風邪を引くのはほとんどが喉からで、声を完全につぶしたことも幾度かある。
かすかすの芯のない声でしのぐ不自由さを知っている。
だから、声を出すのはあまり得意ではなかった。
学校行事で大声を張らされるたび、明日からの枯れた喉を思って憂鬱になっていた。
まして文化部とはいえ部長だったので、スポ根中学校ではしょっちゅう高いキンキンした大声を求められた。
今思えば、あれはずいぶんな仕打ちである。
よく勤め上げたなぁ。
というわけで、喉に負担を掛けるのはダメゼッタイな考え方で生きてきた。
話すときも、厳密には裏を経由させた裏声で話し、地声で声帯を使うのは避けている。
しかし、というべきか、私は今喉を使って歌を歌う環境にいる。
もちろん地声を強く張るポップスは歌えないので、カラオケなんかは行かない。
裏声と地声をうまく使う合唱をしている。
歌を始めてからやっと、声帯の使い方がわかってきた。
歌でさんざん負担を掛けるからこそ、歌の世界では喉の研究がなされていて、むしろケアが手厚い。日常生活でも応用できる。
あんなに弱小だった喉も、大きな風邪以外で傷めることは減った。
地声を張るのも徐々にできるようになってきた。
今の自分の声はわりと気に入っている。
よく伸びる強い高音と、
比較的安定した中低音と、
下限の低い低音。
コンディションが最良なら、これらを使える。
なにより、今までの生活であきらめていた強い声を、歌で手に入れることができたのがうれしい。
口からほとばしるように高音を響かせているときの幸せ感は、思わず笑んでしまうほど。
できないだらけの自分に、やっと自信がついたのだ。
歌って、すごいでしょ?
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