01/18 20:19
「231 蛇行する道を歩む」
なずな
そんなことが私の人生に起こるわけがないと思っていた。
人の生きて死ぬ中に、基本的には発生しない出来事。
確率的にも、ほとんどの人の身に振りかかることは無い、レアケース。
引き当てた。
その日から自分が壊れそうだった。
食べ物の味を美味しいと思わなかった。
能力としての味覚には異常なし。食べるときに心の感受性が動かなけれは味を味として認識できないと知った。
寝られなかった。
眠さだけはあった。カフェインは摂っていなかったし目は閉じていた。あらゆる手は尽くした。でも脳みそが止まらなかった。
泣けなかった。
眠れぬ頭をフル回転させたのちに、電話相談サービスにすがった。誰にも打ち明けられない身の上話を、年上のおねえさんに洗いざらい、ただ聞いてもらっているうちに涙が決壊した。
私の奪われた人間性が帰ってきてくれて心の底から安堵した。私はまだ生きている、と。
やがて、食べ物の味が帰ってきて、眠れるようになった。
まだまだ私は泥濘のただ中にいる。
本来歩かなくていい場所を歩いている。
だって思いっきり吹っ飛ばされたから。
それでも、東西南北、方位が分かってきた。
これならまた未来へ向かう夢街道へ戻ってくることができるかもしれない。
明日を休んだっていい。
方向を間違えないことのほうがよっぽど重要だ。
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