山里紅包粽子/島野律子



猫編10

同人誌「プラスマイナス」108号掲載作品

ゆうきちは排便行為が妙に不器用で、おまけに肛門周りをうまく毛づくろいできません。
いや努力はしてるんでしょうが。なんだか長い前脚を突っ張って体を折りたたんではみても、舌先の位置が明らかにコントロールできてません。
つい「わかったやってやるから」ちり紙をヒラつかせ押さえつけるともう完全に目がパニック色に染まります。なんだか排便行為そのものを責められていると思ってんじゃないのか、非常に悩ましいです。
ゆうきちよ、おまえヒトに虐待されたことなんかないだろーが。どうしてそう、ひねっこなんだよ。
「いじめられています」ゆうきちの動揺はなんだか常にみねこさんへ伝わるようで「なにしてんの」するりとゆうきちへ鼻チューしに来ます。そして容赦なく「くっさー」
くっさーて確かに臭いけどね。みねこはゆうきちの背後に回りこむと渾身の力でぐいぐい舐め始めます。「くっさーくっさー」
だからねみねこちゃん。ちゃんと臭いの元を舐め取ろうよ。ぜんぜん位置がずれてるよ、あんたのそれ・・・。

ゆきちくんはこんなでも、基本的に人好きなのです。いや、だからこその過剰反応なのでしょう。
仕事から帰ると真っ先に通販で見つけた巨大トイレの掃除をします。ゆうきちがおしりに糞をつけたまま体の向きを替えてもこれならば壁や床に糞がこびりついたりはしないかもともくろんだのですがまあ、その。
で、ゆうきちはじっと掃除の一部始終をのぞいています。そして「わかりました、どりょくします」
額に悲壮感を貼り付けてトイレにもぐりこみ、背中を小刻みに震わせながらじっと猫の正座です。「これで、どうでしょうか」
だーっとトイレから全速力で走り去りながらも、私の顔色をうかがわずにはいられないゆうきちです。
そして毎日毎日新たなビニール袋を取り出しては、そのちっさい塊をころりと掘り返しております。ええ、毎日毎日です。

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