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僕と彼女と月の兎
By 竜門勇気
11-25 05:15


ぼんやりと空を見ている
車のエンジンから
かちかちと熱が砕ける音が聞こえている
ただ夜は自分のあるべき姿であらわれた
それがどんな暴力かなんて知らずに
蟻の一匹が黒く湿った小さな紙屑になるように
うずくまる僕の上を両手を広げてふわり浮いている

彼女の怒りが恋しかった
彼女の声が欲しかった
彼女の全部が好きだった

僕はまたいつかみたいに月をみている

ぼんやり町をみている
月と街灯と窓から漏れる無数の光
涙で滲んで消える前に
無数を消そうと光を数えた
にこやかな瞬きとゆらゆら揺れる月の明かり
山の中に打ち捨てられた公園のベンチは
僕にだけ不親切な冷たさを放っている
諦めてしまえば楽にはなるんだ
死んでしまえば感じなくはなるんだ
誰かのために生きていたいとは思わない
彼女に関わる感情を
痛くても 悲しくても 辛くても 感じ続けていたい
無いことよりは 探して絶望するよりは
僕の中にある感情を 彼女に関わる感情を
手放したくなっても 重荷になっても もう中身はどこかへ行ってしまったとしても
感じていたい
まだずっと
だから僕は永遠がこわくない

彼女の言葉は悲しかった
彼女の望みは辛かった
僕は口を噤んだ
僕は両手に戒めをかけた
僕は両足を縛ったんだ
頭の中だけ自由なまま

両目から
とてもじゃないけど信じられない現実がお邪魔してくる
両耳から
僕が嘘だと思いたかった言葉がなだれ込んでくる
何度も悪夢だと気づくのに
まだ一度も目が覚めたことがない

暗い道にはいつも
月がでていて
なんの目印にもならないけど
たまらない愛しさを感じてる
本当は月じゃなくてもいいさ
暗い道を想像するとき
まだ道を見失うほどじゃないのは
想像の外側に月があるから

生きていよう
感じていよう
僕の内側では
暗い世界をちゃんと暗いまま照らしてくれる光がある


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