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[4]ユーロ(PT002)
【私闘の末】
ガッチリ、空飛ぶ何かに捕まった僕は、自然落下ではない感覚で急降下していました。
雲海も抜け、やがて眼下に広がるのは白い山々。
そして肌を刺すようなピリピリとした寒さ……雪です。顔に当たるこの寒さと雪が地味に痛い。
僕を捕らえているその鳥らしきモノは、スピードを少し緩めながら更に降下していきます。
……これなら上手く雪の上に着地出来るでしょうか?
あのまま自然落下で海に落ちてくれるのが一番理想だったんですが、まぁ雪でも大丈夫でしょう……凍ってなければ。
そうと決まれば善は急げ。
幸い両腕共に自由。
愛用のリヴォルヴァー二丁は腰にあって取れませんが、何とか懐にあったサバイバルナイフは取れました。
それを逆手に右手で持ち、出来る限り体を捻ります。
下からではありますが、初めて自分を捕らえた犯人をみました。
灰色の皮膚に、翼はコウモリに似ています。
翼の先に小さな手があり、しっかりした足も二つ。
大きな体躯ですが、全体的に細身。
あの高さを飛んでいたのですから、見た目より丈夫なんでしょう。
これなら多少傷つけても、落下するのは僕だけで済みそうです。
「ごめんよ、っと。」
そう呟くと同時に、ナイフで僕を掴んでいた足に一線。
驚いたソレは、上手い具合に僕を離してくれた。
そして再び訪れる重力落下。
さっきと違うのは、仰向けということ。
小さくなっていくソレと、雪の降る灰色の空を見ながら、僕の空中旅行は終わった。
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110923
[5]ユーロ(PT002)
【世界の生き物】
ぼふっ
そんな効果音がつきそうな柔らかい雪の上に、僕は無事に落ちました。
幸い背負っていたリュックもクッションの代わりとなって、見事に無傷です!
「寒っ!」
起き上がって辺りを見渡すも一面真っ白。
降ってくる雪は差ほどですが、いつ吹雪いてきても可笑しくありません。
とにかく街へいかないと、凍えてしまう!
勘を頼りに、僕はゆっくり雪山を降りていきました。
「ーーちょっ、まって、っ!ナニコレ!?」
下山し始めて数刻はたったでしょうか。
今僕はよく分からない生き物に襲われていました。
いわゆる魔物と呼ばれる生き物でしょうか。
青いニワトリを大きくしたような奴と、細身の狼に氷のトゲが付いた奴。
どちらも素早く、避けるのが精一杯。
持っていたナイフで応戦していますが、足元が不安定で思う様に反撃出来ないんです。
あまり弾薬を消費したくありませんが……そうも言ってられないようです。
「恨まないで下さいね。」
口を大きく開けて向かってきた狼にナイフを投げ、代わりに腰のリヴォルヴァーを抜きます。
ナイフで怯んだ狼ではなく、右手から飛び付いてきたニワトリに照準を合わせ引き金を引きました。
パンッと乾いた音の次に、ギャッと鳴いて倒れる音。
すぐさま身を翻し、もう一丁のリヴォルヴァーを抜いて、後ろに迫っていた狼に標準を……
ズッ 「っ!?」
……合わせようとしましたが、軸足を滑らせてしまいました。
仰向けに倒れ、その気を逃さず狼が僕の上にのし掛かります。
絶対絶命です!
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110924
[6]ユーロ(pc)
【白馬の王子様?】
口を大きく開け、狼の鋭い牙が僕の首を今にも噛み切ろうした時でした。
「タイドバレット!」
その声と同時に、僕の周りに銃弾の火柱が上がりました。
驚いた狼が怯んだのを見て、僕はすかさずリヴォルヴァーの柄で狼を殴ります。
「ギャッ」
思わぬ不意打ちにのけぞった狼に、今度は横から誰かの大剣が一線。
そのまま僕の上から吹っ飛ばされた狼を目で追った後、助けてくれた人物を見上げます。
茶色のコートに黒い長めのスカーフ。
茶髪の髪をかきあげた、彼は左手の銃を終うと僕の腕を掴んで立ち上がらせてくれました。
「おたく大丈夫?かなり危なかったけど。」
「すみません、助かりました。まさか滑るとは思わなくて……。」
「あぁ、見事な転けっぷりだったな。」
しっかり目撃されていたことに羞恥心が生まれますが、今はそんなことを考えている暇はありません。
お互い背中合わせになり、再びやってきた魔物を見据えます。
「話しは後。さっさと殺るぜ。」
「はい。」
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110925
[7]ユーロ(PT002)
【現在地、把握】
その後、難なく魔物を倒し終えた僕らは、再び雪山を下山しながら自己紹介をしていました。
助けて下さった気さくな感じのお兄さんは、アルヴィンさんと言うらしいです。
傭兵をしていて、丁度お仕事の帰りに僕を見つけたんだそうで。
「ホント、あんた運が良いよ。こんな山道で会うなんて奇跡だ。」
「本当、助かりました。この辺りは結構強いんですね。」
「モン高原の魔物といやぁ、結構どころじゃねーよ。」
そう呆れたように言うアルヴィンさんに、僕は苦笑を返しました。
此処はモン高原と言うらしく、ア・ジュールと言う国の首都カン・バルクとシャン・ドゥの間に位置している所だそうです。
今はアルヴィンさんの案内でシャンドゥへ向かっています。
「んで?ハヤト、だっけ?何でこんな所にいるんだ。」
「えっと、魔物に捕まって空から落とされたと言うか………」
「はぁ!?」
「道が分からないので、勘を頼りに歩いていたと言うか………」
「この雪道を!?」
いきなり異世界から〜など話しても信じて貰えないので、とりあえず信じてくれそうな事実だけを掻い摘んで話します。
それでも色々有り得ない事だらけですけど。
アルヴィンさんは疑うように僕を見たものの、とりあえず“そういう事”にしたようでした。
「事情はさて置き、とりあえずシャン・ドゥまで宜しくな。」
「はい、宜しくお願いします。」
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110924
[8]ユーロ(pc)
【生き抜く術】
シャン・ドゥまでの道中、最低限の知識をアルヴィンさんから教えてもらいました。
お金とか、お金とか、お金t………いや、だって、必要ですし、ね?
他にも、この世界のことが分かりました。
ここリーゼ・マクシアは、人と精霊が共存し共生している世界なんだそうです。
「人の頭んところにある、ゲートって所からマナを放出して、精霊はそれを貰う代わりに色んな術を貸してくれる。リーゼ・マクシアはその精霊術で発展した国なんだよ。………おたく、本当に何も知らないんだな。」
「あははは……」
アルヴィンさんには怪しまれつつも何とかごまかしてます。
“箱入り息子が外に出たら魔物に攫われた”と言うちょっと無理のある設定で押し切ってます……嘘は得意ですよ?
あ、それから魔物と戦う上で便利な道具も頂きました。
リリアルオーブと言う、花の形をした物で、潜在能力を高め引き出してくれる代物です。おまけに、これを持っている人は共鳴<リンク> することが出来、繋がっている相手の動きがわかるんです。
コレのお陰で魔物との戦いは楽になりました。
本当にアルヴィンさんには感謝です。
何かお礼を………
「そうだ!」
「っ、いきなりどうしたよ。」
洞窟のような地下通路を歩いて、もう少しでシャン・ドゥ
だと言うアルヴィンさんの言葉を遮り僕は言いました。
「アルヴィンさん!暫く僕を雇ってくれませんか?」
「は?」
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