halo





柔らかな夜の膜
水の堤防をなぞった先には
三日月が浮かぶ
幾重にも剥がれる
波の揺らぎの対岸で
いもうとは
ずっと
笑っている


誘蛾灯の青白いひかりに
薄い翅は焦がされて
かさぶたのように
零れていく
ひとつ、ひとひら、ひとり、
拾っては繋げて
千切られてはまた、


耳の裏をくすぐり通り抜ける
過透明な風に
揺すぶられ
いっせいに飛びたつ翅
空は持たないまま
降りたつ場所も
知らないまま


か細い骨を
掬いあつめている
あたしの手のひら
しやりしやりという音、
笑っているんだね
いもうと
火葬場の待合室、
天窓の隙間から零れ落ち
積もる砂状のひかり
そのひと溜まりを
眺めながら
やけに熱い緑茶を飲み
煙草を吸った
ひとすじの汗が伝う背筋
静かなざわめき、
いもうと、


水辺に咲く花
舌の繊維を乾かすように
蘂を起こして
血液よりも鮮やかな赤
まんじゅしゃげが
笑っている、
上唇のかたちの月と
僅かに残るアスファルトの熱に
切り立った影が
蒸発していく


長い指にめくられて
朝の臨界線が瞳に突き刺さる
あたしの水晶体は
折れ曲がっている
のかもしれない
真っ直ぐを見ることが、
できない
乱反射をはじめた水が
やさしく笑って
いて、

ふと
手のひらを広げれば
隙間から粉々に舞っていく
いもうと、
川の真ん中で跳ねる魚
波紋が伝わる速度で
笑っている、ずっと
眩しい
眩しい、



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