はじまりに




幾千の穂が
たなびく草原で、
私は父の肩に乗って
シャボン玉をつくった。
溜息に膜をはり
七色に煌めくそれは、
遠くまでいけないことを知りながら
膨らみ、
回転し、
離れていく。


夢中になって
飛ばしていたら、
履いていた白い靴が脱げて
転がっていった。

追いかけて、と
父を見ると、
父は錆びていた。
少し頬なんかを擦ってみると、
赤茶色い粉がぱらぱらと舞っていく。
気づかないうちに
シャボン液をこぼしてしまっていたのかもしれない。


肩車から降りられなくなった私は肺呼吸を忘れて、エラ呼吸しか出来なくなり
ぴちぴち跳ねる。

拍子に父の肩から落ちて、転がる白い靴を追って草原の先の断崖へ向かう。

断崖の先には海がある。

いつの間にか両足はくっつき、両手はヒレになっていて、私はもう体を踊らせながら進むしかなくなった。なかなか上手く進めない。くるぶしが邪魔をするのだ。


白い靴は、お先に、と跡も残さず消えていった。


いよいよ酸素が足りなくなって、
脳は溶けて泡立ち(脳はシャボン液だったのかもしれない)溢れる、

しかしもう先端だ。







高い崖には、
一匹の死骸が横たわる。

それを見届けるようにして、溜息はパチンと割れた。




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