芽生え




宙から音が生まれる。
腕を伸ばし、薬指にふれたら
共鳴する。


新月を瞳に記憶した白い子猫が、
老木の影の端をくわえ
地球の片隅まで駆けてゆく。
木の葉は風にめくれて
真夜中を次のページへと
うながす。たまに零れた
光の粒を確かに、
受け取る。


湾曲する崖に海が滲む。
遠く、霞みがかった空から
黄金色の鳥がやってくる。
足元に一切れの草を落として、
私の背中に潜む森にかえる。
成分はちがっても、ちゃんと
知ってはいるから、
まるごと内包した瞬間に
ひとつの種をはく。

透き通った、青。

湿った土を掻いて、
たどり着いた朝に植える。
だ液をたらして、
再び土をかぶせた。
とても平たんになる。
睫毛をかさねて
地に、耳をじっと
くっつけて、待つ。


宙から音が生まれる。
あたらしい芽が
私の鼓動を懐柔し、
ほどいてゆく。



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はなのかんむり






















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