そよ風




晴天にて
まもるべき約束もなく
路上に寝転がっていると
ひかりの粒が
むやみに身体に積もっていけない

ぶうらりと立ち上がり
みじかい刃物を右手に握り
あるくと、靴屋の角
咲く花があり
とてもうつくしいので凶器に違いないと
刃物を捨て
根っこごとむしりとった
あかく点灯している交差点を渡り
ふと振り返れば
あるいたあとに土の蛇行が続き
手のなかを確かめると
なにも残っておらず
膝小僧に
ぼろ布のコートの裾が揺、れる
街に車は一台も滑らない
自然だけがゆるされる
世界だから

冬のさいごの日、
母はひとの形をして燃えてゆき
(ばら星雲のあかり)
ぽったりと果実になった
齧るとあまく喉をとおると
やがて内臓を焦がした
そうして私も
ぽったりと果実になり
同じように
逆光にしゃがみ私をつまむ少女を
焼くのだ
(はやく焼きたい)
少女の肩越しにあおぞら

 起き上がるときは
 いつも晴天だから、
 ふところに傘はいらない
 そっと呟くように、私の名を
 置いていったひと
 笑顔がはりついていて
 よく、わからなかった





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