雪のとける速度で




電話線のない
世界から海がきこえて彼は着水
しているのだと気づく
たぷんたぷんと
音がして
少し、魚の跳ねる音、もする
そっと眼をとじる

取り留めのないことを、話そう
つたない声帯のまま
明け方、うすくひかる星が瞬いて消えていったこと
タスマニア州の友人からの電話で目覚めたこと
仕事でたくさんの数字を書いたこと
(あれらはなんの数字だったのだろう)
帰り道、金網越しのゆうぐれに飛行機が墜落、したこと
今ね、部屋にいるよ
テレビからみんなのうた、流れてるんだ
もう口ずさめるくらいでね
、うれしい

      すく すく

こどもたちは
皮膚らしい皮膚をなくして
成長しすぎている
ひょっこりと宇宙にとうめいの体を現して
たのしそうに
ちいさな惑星の話などをする
時折
なんだか足のうら、ちくちくしない? って
街の高層ビルを次々、なぎ倒してゆき
あたしたちは
そんな仕草ひとつひとつに
どうにか名前をつけ
過不足ない理由をさがしている
こどもたちはわらいあい
いっそう成長をした

 *
やがて、プツンと通話がきれて
ふかい、ふかい静寂

こんばんは 彼の 居場所を 知らせぬ 電話
交わした ことばが スノウドームの、ように
舞って わからなく なっても 重なって きしんで、も
ひたすらに 在れば いい
君は 祈り と、して

壁に掛けたとけいの
秒針は鼓動だけを繰り返して
いっこうにすすまない
あたしはどうしたって生きてしまう
体を横たえ
みんなのうた、口ずさみながら
カーテンの隙間から覗く漁火を、数えていた
ふっと息を吹けば漁火の消え、
体内から溢れでるふたしかな
水流にみずからをあずけ
海へたどり着こうといっせいに
せせらぐ







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はなのかんむり






















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