かかしと蛙



交差点にやってくると、
丁寧な矢印が立っているから
深くお辞儀をする。
そうやって矢印と矢印の
まんなかを、歩いた。

のぼり坂に恋したことはない、
から、駆ける。
足が一枚、一枚
剥がれていって、
水滴がはじけとんだ。
その度あたらしい皮膜が
声をあげて、乾く。
やっと
いっぽんになれて、
地平線にぶら下がる。

ゆうやけを撫でる風が、
夜を連れてきた。
やさしい、波のような
ほのぐらい色だった。
はじめまして、と
麦わら帽子をとると、
かすかに震えて、
親指をかすって、帽子を
持ち去って行ってしまった。
あ、という間もなく、
見えなくなる。
夏のにおいだけが振り落とされて、
矢印みたいになっていた。


青い葉がかき分けられて
できた道の先には、
雨が降る。
やがて止むことを知っているのは、
目を閉じた蛙。


蛙だけが、
むかえることのできる、
虹の朝。


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