孵り



空は夕。


小さな町は
猫のざらざらの舌に撫でられるように
あさく、
でたらめに、
霞んでいく。

山は山ではなく
額縁になって
地球から切り取る
大きなキャンパス。もう子供の頃のよう
に、無邪気に絵、なんて描けない。



薄い砂利色、の広告が
飛行機になって
宙を飛んでいる。


北からのこそばゆい風

に震えるように揺れた、のは
飛行機だったのか
空だったのか
それとも私の乾いた唇だったの、か、

あるいは、きっとどれもだろう。




街灯や信号や店から溢れ出すものに集まり、
晒され、
 混ざり、
  ゆっくり溶ける
夜光虫を眼の端に捉えながら、今、子持ちシシャモが食べたい、と思う。



心地よくも不快な
笑い声は、赤。コート。ハイヒール。


少し、眩暈。

モルヒネのせい。


舌打ちして、
絡まる痰を吐き出したら

町全体は
うにゃり、と歪み、

高層ビルは砂消しのカスみたいに
ぽ、ろぽろぽろ
と削り落とされ、




ショーウインドーに映る私は
もうすっかり、
私ではない。


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はなのかんむり






















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