真夜中にダンクシュート



真夜中に雲を眺めて歩く。
むこうがわから
ブロック塀のうえを
白い仔猫が歩いてくる。
少し汚れている。
すれ違い、お辞儀をする。

鈴の音が、響いた。


ひっそりとつくられた町に
埋め込まれたバスケットコート。
夕方に騒いでいた少年たちの声が
広場を囲む金網に染みついて
カラカラと震えている。
ゴール下に隠れるようにして
浮かぶバスケットボールを拾う。
フリースローのラインは
ところどころ途切れていて、
靴のつま先で擦って、繋ぐ。


呼吸を繰り返せば、濃紺の肺。
拡散する息の鈍角のように
ゆっくりとドリブルをする。
父のダンクシュートを思い出す。
記憶のなかでは皆、顔がない。
だから
ダンクシュートをしていたのは、
父ではなかったのかもしれない
と思う。
見ていたのもきっと、
私ではなかった。
けれど、安堵する。
ボールが手の中にかえってくる。


遠くのほうで
救急車のサイレンが鳴っている。
ちら、と腕時計に目をおとし
跳躍をはじめる。

白い秋桜が揺れた。




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はなのかんむり






















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