あさっての新聞
公園の広場、
おんなのこが地面に木の枝でらくがきをしている。
○月△日 くもり ときどき はれ
森が火じになって、たいへん。
たぬきもいのししも、からすもみみずもばったも、大いどう。
きんりんの生きものたちも、すみやかにひなんしましょう。
わたしはスカートをたたんで隣にしゃがみ、ひょいと覗きこむ、おんなのこもわたしの顔を見上げて、ふふ、と笑った。
「何、かいてるの?」
「んむ、しんぶんー。」
「新聞?」
「うん、あさっての、なの。」
ふぅん、と呟き、地面に広がる新聞を見る。文字は大きかったり小さかったりして、ひとつひとつ不思議なかたちをしている。おんなのこはもう一度、ふふ、と笑う。
公園の隅っこのほうで、シロツメクサが揺れた、と思ったら、頭の上を雲がとおる、細かな砂が舞う、文字は消えていく、いいえ、帰っていく、「わたしもそろそろ、かえるじかん」、おんなのこはつぶやき、そして、声の波が干いていく、そのあとに太陽が顔を出す、横を見やると、そこには誰もいない、木の枝が転がっている、あさってが転がっている、わたしも転がっている、
その脇をたくさんの生きものたちがひなんしている、
遠くの方で、消防車のサイレンが響いている
、
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